※基本的に核心に触れるようなネタバレはありませんが、余計な事前情報を入れたくない方は読まない方が良いでしょう。
自分はサイレントヒルシリーズの大ファンです。
初めてプレイしたのはサイレントヒル2です。
当時の自分は中学生でした。
正直に言うなら、ストーリーなどはさっぱり分かりませんでした。
覚えているのは、やたらとマップに迷ったこと、そしてやたらとゲームの雰囲気が大人っぽいこと(ホラーゲームといえば、バイオハザードなどで育ったので余計にそう思えたのだろう)。
それから時が経ち、ネットが普及した頃に、サイレントヒル2について調べてみました。
そのときの衝撃はいまでも覚えています。
こんなに作り込まれたゲームだったのか…!!
ストーリー、世界観、クリーチャーのデザイン。
考察記事を目を皿にして読み込んだ記憶があります。
またゲームを買い直しプレイしました。
それはまさに至福の時間で、目に飛び込んでくる情報を咀嚼しているだけで最高のプレイ体験となりました。
これは凄いゲームだ。
これは世界遺産レベルの芸術だ。
すっかりサイレントヒルシリーズの虜となった自分は、それからナンバリングタイトルをすべてプレイしました。
PS3の時代には、日本では未発売の”ホームカミング”も輸入盤を購入してプレイしました(ゲームはバグまみれで本当にまいった…そしたあまりのグロさにびびった…)。
ちなみに、映画版もリアルタイムで映画館まで見に行っています。
余談ですが、ねんどろいどのロビー君も買いました↓
とまぁ、この程度にはサイレントヒルシリーズには思い入れがあるのです。
そんな自分がシリーズ最新作である”サイレントヒルf”をクリアしました。
思うところを語りたいと思います。
感想やレビューというよりも、思うところを長々と語る感じになります(かなり長いです)。
サイレントヒルfですが、
ゲームを何周したのか?
これによって大きく評価が変わると思います。
自分が初見で一周目をクリアしたときの印象ですが、サイレントヒルとしては40点、純粋な和風ホラーゲームとして見た場合は70点といった感じでした。
これはサイレントヒルである必要があるのか?
新規IPとして発売したなら、余計な先入観も無く、もっと評価されたんじゃないか?
このようなことを思いました。
まず、サイレントヒルとして見れば、世界観があまりにガキっぽい(”子どもっぽい”と表現するべきなのかもしれないが、あえて汚い表現をさせて欲しい)のが気になりました。
とくに重要人物である”狐面の男”です。
週刊少年ジャンプに出てくるような、ラノベに出てくるような、アニメに出てくるような。
これを格好良いと思える感覚が自分にはありませんでした。
この狐面の男が、怪異(クリーチャー)を追い払う場面は、かなりキツかったです。

自分は一体何を見せられているんだ…?
サイレントヒルってこんなにガキっぽい世界観だったっけ…
そして、とにかくわけがわからん。
最後までクリアしてもわけがわからん。
(振り返れば、一周目が意味不明なのは、ゲームの仕様なのだが…)
ゲームとして、気になる部分をいくつか挙げていこうと思います。
まずは、”戦闘”についてです。
率直に言えば、出来が良いとは言えません。
ホラーゲームにしては、かなり複雑なシステムです。
弱攻撃、強攻撃。
ジャスト回避、カウンター。
集中ゲージなどなど。
まるでアクションゲームです。
中途半端に作り込まれているだけに、面倒くさいのです。
面白いのは最初だけで、すぐに飽きてきます。
ちまたでは、ソウルライクなんて声もあるようですが、さすがに大げさです。
ソウルライクほど戦闘を楽しめるような作品ではありません。
個人的には、強攻撃を当てたあとにすぐに動けないのがストレスでした。
強攻撃を当てると、高確率で敵は怯み状態(スタンに近い)となるのですが、そこにテンポ良く追撃できないのが嫌です。
怯み状態となったら演出が入って確殺くらいで良かったと思います。
強攻撃がスカった場合は硬直が長くて良いですが、当てたのに硬直が長いのはフラストレーションでした。
それと、ゲームそのものが絶望的に怖くないです。
誇張ではなく、自分は本作をプレイして、一度も怖いと思いませんでした。
初見プレイのときですら、まったく怖くなかったです。
主人公が強く、アクションゲームのような戦闘が出来るからでしょ?
主人公を強くし過ぎると、ホラーと食い合わせが悪いんだよね…
このように思う方もいるかもしれませんが、自分の意見は少し違います。
そもそも、どんなホラーゲームもプレイしているうちに恐怖に慣れるのです。
あの名作ホラーゲームであるSIREN(サイレン)が顕著ですが、、
最初は怖かった脅威も、プレイするうちに恐怖よりもイライラが勝つようになる。
これはホラーゲームであれば避けられない現象だと思います。
仕方ありません。
サイレントヒルfの問題は、あまりに早い段階でプレイヤーにそれを感じさせてしまうことです。
うわっ!敵だ!やべぇ!
何だ…?意外と余裕で倒せるじゃん!
敵発見!やってやるぜ!撲殺じゃ!
あぁ…何か飽きてきたな…戦うの面倒くさいわ…(←この段階に辿り着くのが早すぎる)
自分は、初見の一周目ですら、中盤くらいには戦闘に飽きていました。
戦闘の問題点にもう1つだけ触れると、劣悪なカメラの挙動も挙げられます。
狭い空間で戦うと、敵の動きが見えなくなり、わけもわからず殴られます。
しかも狭い空間で戦う場面もそれなりに多いです。
カメラとは少し話題がズレますが、ゲームのレビューを見ていると「死角からの急襲が多すぎて嫌になる」という意見もちらほらありました。
これも下手にアクションゲームに寄せた弊害のような気がします。
つまり、アクションゲームとして見るなら、”初見殺しによって体力を奪われる理不尽仕様”となってしまうのです。
自分はあくまでホラーゲームとしてプレイしていたのであまり気になりませんでした。
(なるほど、そこに仕込んで来たか…やられたぜ…)
なんてジャンプスケアを楽しむ感覚で最後までプレイしました。
あと、アイテムの所持制限も要らなかったと思います。
サバイバルホラーとしての緊張感(面白さと同義)に繋がっていないし、鬱陶しいだけでした。
謎解きも気になります。
感覚的な表現で申し訳ないのですが、個人制作されたフリーゲームの謎解きのような印象を受けました。
そのような表現(言い回し含む)をしたのなら、何とでも解釈できるよね?
問題が洗練されていないというか、解いたあとですらあまりスッキリしませんでした。
ダメ出しすればキリが無いタイプの作品なので、細かな不満点はこの辺りで切り上げます。
もっとも大きな不満点について書きます。
それは”プレイヤーが物語の魅力にたどり着く前に挫折するであろう周回システム”です。
本作は周回前提の作りになっています。
周回することによって、より物語を深く知れるのではありません。
周回しなければ、意味不明なんです。
記事の最初の方で、ゲームを何周したのか?によって評価が変わるであろう、ことを書きました。
1周しかしていないのなら、それはドラマを一話だけ見た、漫画を1巻だけ読んだ、それらに等しいです。
評価が変わるとはそういうことです。
周回前提なのに、周回プレイが快適になるように作られていません。
またあの場所をやらなけらばならないのか…
そう思える場面が多いのです。
戦闘もその一つです。
またあいつと戦わなきゃならないのか…
戦闘に関して言えば、今作には「お守り」というシステムがあります。
お守りを装備することによって、主人公がさまざまな恩恵を受けられるようになります(体力アップ、攻撃力アップなど)。
このお守りというシステムを使えば、いくらでも周回プレイを快適に出来たでしょう。
たとえば、ダメージを受けない、相手を一撃で倒せる、など(”敵が出てこない”、”敵が自分を感知しない”などでも良い)。
2周目移行にチート級のお守りを登場させれば、少なくとも戦闘によるストレスは解決できたはずです。
しかも、それらを使うかどうか、プレイヤーの判断に委ねられるのも良いポイントです。
※2周目からは強い武器が手に入るのですが、その入手方法もやたらと面倒くさいし、戦闘が煩わしいことは変わりません。
そもそも、”一周目が長すぎた”と思うのです。
自分は一周目の半分くらいから、すでにプレイするのに嫌気がさしていました。
前述したように、早い段階から戦闘に飽きていたこと、それと”やらされている感”があまりに強すぎたのが原因です。
マップが窮屈で、好き勝手に探索できない(行き止まりばっかり…)。
「町」と「狐面の男のいる世界」の往復(何度繰り返すんだ…)。
物語があまりに意味不明(仕様なのだが…)。
序盤はこのような顔でプレイしていました↓

※サイレントヒルの新作+和風ホラーという悪魔合体にガンギマリだった。
中盤くらいからは、このような顔でプレイしていました↓

これいつまで続くんだ…?
この物語はどこに向かっているんだ…?
自分は何をやらされているんだ…?
少なくとも、一周目はもっと短くして欲しかったです。
(ひぐらしではないが)周回させるのではなく、◯◯編という形で物語を分割させても良かったような気がします。
周回したとしても、一周目との変更点は全体の2割くらいで、大筋はほぼ一周目と変わりません(その変更点が超重要なのがまた厄介である)。
真のメインディッシュを食べたければ、またフルコースを最初から食べなおしてね
そんなことを繰り返されたら、誰でも胸焼けするし、食べたくなくなります。
大多数の人間は箸を置くでしょう。
いきなり結論ですが、自分なりに本作を評価するなら、
サイレントヒルとしては100点。
ゲームとしては60点です。
周回プレイをし、物語を把握した上で言います。
本作は間違いなくサイレントヒルです。
ひとつ暴言を吐きます。
本作を周回プレイした上で、「こんなのサイレントヒルじゃない」という人たちには全く同意できません。
繰り返しますが、本作は”間違いなくサイレントヒル”です。
サイレントヒルらしさとは何か?
自分なりに表現するなら、「個人の精神的なトラウマに基づいた地獄巡り+オカルト」です。
そういった意味では、本作はサイレントヒル以外の何モノでもありません。
何周もさせられるのは別の意味でも地獄巡りだったのだが…
その世界観やクリーチャーの容姿など、これ以上はないほどにサイレントヒルです。
少なくとも、昔からサイレントヒルが大好きな自分は、本作に大満足しています。
戦闘に関して多くの不満点を挙げましたが、気に入っているところが2つあって。
1つめが、とある回復アイテムの存在です。
回復アイテムとして有能で、一周目の初心者救済というゲーム的な役割も果たしながら、物語にも深く絡んでくる、という作りは素直に上手いと思いました。
2つめが、”包丁が半端じゃなく強いこと”です。
”現実的”に考えれば、鉄パイプや斧の方が強いと思う方も多いでしょう。
しかし、サイレントヒルfでは包丁が強いのが正しいのです。
日常にある凶器のなかで、主人公の雛子がもっとも恐れていたものは何だったのか?
包丁が強いのは、素晴らしい仕様です。
プレイし、考察を重ねる事に、サイレントヒルfがどんどん好きになっていく自分がいました。
最初は、人の醜い部分だけをピックし過ぎじゃないか…?なんて思っていた登場人物も、段々と印象が変わっていくのも楽しい部分です。
ただ、周回システムだけは強く否定します。
周回そのものよりも、周回をする前提なのに、楽しく快適に遊べる仕様になっていないのは強い不満があります。
というのも、、
記事の冒頭で、自分はサイレントヒル2からシリーズのファンになったことを書きました。
中学生の頃に初めてサイレントヒル2をプレイしたこと、当時はストーリーなどサッパリ理解できなかったこと、時が経って考察サイトを読んで初めてどんな作品なのかを理解したこと。
そのときに思ったのです。
自分は考察サイトで答えを知ってしまったけれど、もし自分の頭で考えていたら、もっと作品を楽しめたのではないか、と。
答えを与えられ、
「へぇ~そうなんだ。なるほどね」で終わるのと。
自分の頭で考え、
「いや、待てよ、ということは…つまりこういうことなのではないだろうか?」
たとえ同じ正解にたどり着いたとしても、その体験の密度は段違いです。
ゲームを実況動画(解説動画)だけで済ませるのと、実際にプレイするのと同じくらいに違うでしょう。
自分の頭で考える。自分で実際にプレイする。
そういった素晴らしい体験を奪いかねない周回システムだけは強く否定します。
正直に言うなら、自分も投げ出そうか迷いました。
自分は普通の社会人です。
時間が無いです。プレイするのだって面倒くさいです。
ちなみに来週は休日出勤もあります(本気で会社が霧に包まれてくれないか妄想している、あるいは1錠で体力も精神力も回復するお薬が欲しい)。
もういっそYouTubeでネタバレ動画見よっかな…動画で済ませよっかな…
そう思いました。
ですが、最後までプレイして良かったです。
サイレントヒルfは傑作です。
間違いなくサイレントヒルです。
真摯に作られた和風ホラーです。
新たなサイレントヒル、完全新作であるサイレントヒルfを、昔からのファンの一人としてプレイできたことを心から幸せに思います。
作ってくれてありがとうございました。
自分はサイレントヒルfが大好きです。
※余談

作中で登場する”お風呂”ですが、自分が子どもの頃に古い家で見たことがあります。
懐かしく思いました。
バグった画面です↓

一周目のゲームの後半で突然バグりました(Steam版)。
それまでバグなど遭遇しなかったので、演出だと勘違いして続行していましたが、どうやらゲームがクラッシュする不具合があるらしいですね。
いわゆるメタ的な演出(ゲームのバグに見せかけた演出みたいな)だと思い込み、これも主人公の精神状態を表しているんだろう…凄い演出だな…なんて考えてプレイしていました。
自分の場合はゲームを再起動したら直りました。
最後に。
サイレントヒルfは素晴らしい作品です。
間違いなくサイレントヒルです。
自分がサイレントヒルのファンであったことを心から良かったと思えるような作品でした。
ここまで長文を読んでくれて本当にありがとうございました!





