eスポーツによってゲーマーが注目を浴びることは、ゲーム好きとして嬉しい限りです。
しかし、その陰で確実に失ってしまった、変わってしまったものがあるのも事実です。
今回は、eスポーツによって失われた職人プレイヤーについて書きます。
格闘ゲームの話題となります。
ボクは昔から格ゲーが大好きでずっとプレイし続けています。
大会に出たこともありますし、強豪プレイヤーと呼ばれる人たちのことも見てきました。
かつて強豪プレイヤーと呼ばれていた人たちが、現在のプロゲーマーとして活躍しているのをとても嬉しく思います。
鉄拳で言えば、チーム山佐のノビさんやユウさんは鉄拳5DR(現在から15年以上前のゲームです)の頃からチェックしています。
昔はプロゲーマーというものなど無く、ゲームでお金を稼ぐなんて想像すらしていませんでした。
その時代では、いわゆる職人プレイヤーと呼ばれる人たちがいました。
職人という名の通り、その人にしか出来ないプレイをする素晴らしいプレイヤーたちです。
とくに、特定のキャラの扱いに長けたプレイヤーは多くの人を魅了しました。
そのキャラの強さに関係なく、惜しみなくキャラ愛を注ぎ込み、そのキャラをやり込む。
そういったプレイヤーが数多くいました。
鉄拳5DRで言えば、鉄男さんや蒼天さんが当たりますね。(このプレイヤーネームでニヤニヤできる人は間違いなくおじさんです)
鉄男さんの使うレイは、まるで演武のように、キャラのできることを全て対戦に落とし込んだ凄まじい動きをします。
蒼天さんの使う吉光は、当時弱キャラとされていた吉光の可能性を存分に天下に知らしめてくれました。
2Dゲームなら、ストⅡ、ZERO3、3rd辺りが職人プレイヤーが多いですね。
あの時代を一緒にプレイできたことを本当に幸せに思います。
時は変わって現在、職人プレイヤーも随分と減りました。
格ゲーの対戦レベルもどんどん引き上げられ、キャラ選びからすでに勝負が始まっています。
自分が使いたい思い入れのあるキャラよりも、強くて勝てるキャラをピックしなければ格ゲーシーンで生き残るのは難しいです。
鉄拳のプロゲーマーであるノビさんも、長年使い続けてきたドラグノフを大会で出すことが減りました。
現在のバージョンではドラグノフはそれほど強いキャラではありません。
もっと強いキャラがいますし、主力技であるシャープナーに痛い反撃を入れられるキャラが増え、ドラグノフで勝ち続けるのは難しくなりました。
明らかに現在のゲームの方が対戦バランスが良いです。
アップデートでリアルタイムにバランス調整が行われる現在の方が、ゲームバランスが整っています。
昔のゲームの方が滅茶苦茶なバランスでした。
物凄く冷徹な言い方をすれば、昔は職人プレイヤーが活躍できるほど、対戦レベルが低かったんだと思います。
現在、キャラ愛にこだわって格ゲーシーンで生き残るのは極めて難しいです。
板橋ザンギエフさんですら、ザンギエフではなくアビゲイルやGを使用している現実があります(これらは大会の規約的に仕方のない部分があったりしますが)。
現在、職人プレイヤーがお金を稼ぐとすれば、動画配信でキャラの攻略情報(こちらはブログなどでも良い)や対戦動画を提供するというやり方があります。
キャラにこだわらなくても、コンボ職人と呼ばれる人も動画投稿で稼ぐことができると思います。
活躍の場がないわけではありません。
問題はプロと呼ばれる人たちで、勝つために自分の使いたいキャラを使えないのは少し残念に思います。
その最たるものが、「EVO Japan 2020」の鉄拳7の大会です。
リロイスミスという新キャラが発表されたばかりの大会です。
リロイスミスという新キャラは俗に言うぶっ壊れキャラでした。
ゲームバランスが崩壊するほどの強さに仕上がったキャラで、なんと大会でTOP8のうち6名がリロイスミスを使用するということになりました。
勝つためにはリロイスミスを使わざるをえない、それほどリロイスミスは強かったのです。
格ゲー界隈では炎上事件となってしまったほどです。
〇〇というプレイヤーの使う〇〇は凄い、〇〇というプレイヤーの使う〇〇は全一(全国一位の略)だ、そのような声があまり聞かれなくなりました。
勝つためには自分の使いたいキャラよりも勝てるキャラをピックしなければならない、現在の格ゲーシーンのレベルの高さと寂しさを感じます。
もちろん、プロは勝つのが仕事ですから、プロの姿勢にケチを付けたいわけではありません。
また、昔の方が良かったというような懐古主義でもありません。
ただ、職人プレイヤーと呼ばれる人が表舞台で活躍の場が無くなっていく現状を少し寂しく思います。