現実から目を背けたことのない人間なんていないのだから「Mouthwashing」【感想、レビュー】

一人称視点（FPS）のサイコロジカルホラーゲームです。

難破した宇宙貨物船に取り残されたクルーの人間ドラマを描きます。

救命率0％、物資が尽き、希望が潰えるまで、彼らの運命を見届けましょう。

ホラーゲームですが、そこまで怖いわけではないです。

怖がりな方もプレイできると思います。

ジャンプスケアもありますが、回数も多くないですし、心臓が飛び出るほどハードなものではありません。

グロ描写（ゴア描写）はエグい方なので苦手な方はご注意。

アクション要素は（ほぼ）ありません。

基本的にはおつかいゲーです。

指示された通りの場所に行って、簡単なパズルを解けばゲームが進みます。

難易度が高い作品ではないです。

・サイコロジカルホラーが好きな方

・考察が好きな方

・短編映画のような作品がプレイしたい方

・胸糞好き

・サクッとプレイできる作品が遊びたい方

・人間ドラマが好き

・ローポリ（ローポリゴン）のグラフィックが好き

・どのキャラクターも魅力的に描かれている

・ゲーム進行の導線が上手い

・精神世界の描写がケレン味があって良い

・3D酔いするプレイヤーのための配慮がある

・かなりの胸糞なので人を選ぶ（ネタバレになるので詳細は伏せるが、あるトラウマ的な経験をした方にとっては本当に辛い思いをする可能性がある）

・ヘッドホンプレイ推奨

・画面酔いが気になるならオプションで画面揺れを無くすことができる

傑作です。

制作者のやりたいことが過不足無く詰め込まれた大傑作です。

ストーリー、テーマ、演出、キャラクター、その全てが極めて魅力的に描かれています。

何を描写して、何を描写しないのか。

ほぼ完璧なバランスで作られています。

最初は、宇宙のヤバい怪物やウイルスなんかが宇宙船に入り込み、ドタバタするサバイバルホラーだと思って購入しました。

実際は濃密な人間ドラマです。

胸糞人間ドラマを堪能する作品です。

胸糞人間ドラマと言っても、決してドロドロしているわけではないんです。

むしろ、登場人物みんな良いキャラクターをしているんです。

当たり前ですが、どんな人間にも、良い面と悪い面があります。

劣悪な環境（ブラック企業によるブラック労働、さらに閉鎖空間）でボタンの掛け違いが発生してしまったのも事実です。

キャラクターの描写はもちろん、環境にも原因がある、どこを取ってもフェアな描き方がされているのが好感が持てるポイントです。

本作には、誰もが吐き気を催す邪悪を覚えるキャラクターが登場します（ネタバレになるので詳細は伏せる）。

人間の醜悪さが凝縮されたようなキャラクターです。

起こした行為の数々は決して許せませんが、それでもボクは嫌いになれないんですよ。

目の前の現実を受け入れられず、上手く行っている人を羨望、そして嫉妬し、関係の無い他者を傷つけ、責任からも逃げ、目を逸らす。

それって誰もが抱える人間の弱さじゃないですか。

あなたの中にも、もちろんボクの中にも、そのような部分があるはずです。

現実から目を背けたことのない人間なんていないはずですから。

そして、そのキャラクターにも良心の呵責はあったのだと思います。

精神世界で恐怖に襲われていることからも、それが分かります。

何を恐れ、何から目を背けているのか。

そもそも良心の呵責が無ければ、苦しむことはないはずです。

このような部分もやっぱり描き方がフェアなんです。

ゲームの部分に触れると、ゲーム進行の導線が上手いと思います。

とくに上手いのが、泡を使って進行方向を限定させることです。

この泡は宇宙船の気密性を保つため（宇宙空間で穴が空いたら大変）に使用するものです。

泡によって、前まで行けた場所が封鎖されたり、以前は調べられた場所が調べられなくなっています。

これによって、無駄にマップをグルグルする必要が無いんですよ。

この空間の中にゲームを進行させるための仕掛けがありますよ、あっちは調べる必要がありませんよ、とプレイヤーに提示する役割を果たしているのです。

ゲームの設定的にも、メタ的な視点でも上手い仕掛けだと思います。

プレイするほど、考察＆妄想が捗るような作品でもあります。

時間を置いて、もう一度プレイしたくなります。

きっと、また新たな気付きを得られるでしょう。

大傑作です。