「X/エックス」という作品の前日譚にあたるホラー映画です。
病気の父と厳格な母の元で、農場で暮らすパール。
抑圧された生活のなかで、スターになることを夢見る少女が見出した生き方とは?
前作である「X/エックス」を見ていなくても楽しめますが、前作を見ていた方がより楽しめます。
グロ成分が高めです。もろに食欲が無くなるような描写もあります。
シュールで笑える場面もチラホラありますが、深く考えさせられる部分も多い作品です。
・鬱屈した生活を続けている方
・上質なホラーが見たい方
・エロやグロが好きな方
・夢破れた方
・社会の格差などに不満がある方
現時点で2023年公開の映画でベストです。
エックス、パール、マキシーンと三部作を予定している作品ですが、本作が二作目にあたります。
前作のエックスの時点で傑作でしたが、今回はそれを超えていました。
テーマや、やりたいことがより分かりやすくブラッシュアップされている印象です。
やっぱりタダ者ではなかった。やべぇよ、この映画。
主演のミア・ゴスの怪演が凄まじいです。
その顔面力、顔芸も相まって、無垢な怪物という言葉が良く似合います。
しかも体を張ってます。
案山子(かかし)と疑似性交(自慰行為)するシーンは並の女優ではつとまらないでしょう。
本作は、いかにして夢見る少女であるパールが殺人鬼となってしまうのか?というお話です。
その理由も個人的にはかなり納得のいくものでした。
なぜなら、誰の心にもパールがいるからです。
パールは純粋で、夢見がちで、感受性が豊かなで傷つきやすい女の子です。
ステレオタイプの思春期の女の子とも言えるでしょう。
誰でも人生でそんな時期があると思います(それは性別に関わらず)。
それが夢破れたときにどうなってしまうのか?
思うに、パールには2つの悲劇があったと思います。
1.自分の異常性を自覚していること
2.他人の気持ちに極めて敏感なこと
この2つが無ければ、ただのサイコパスのシリアルキラーとして終わりです。
この2つを持ち合わせているからこそ、パールというキャラクターにぐっと深みが増し、また感情移入できるのです。
後半の異様に長いパールの告白は、ボクの心をとらえて離しませんでした。
私の何が悪いの?
私が何をしたっていうの?
私は人生に納得したいだけ。
結果的にパールはシリアルキラーとして生きることを選択します。
それで良いのだと思います。
パールが走りながら斧で襲いかかるシーンが、前作を見ている身からすれば本当に感慨深い。
そんなシーンはホラー映画では見飽きているはずなのに、前作での老婆となったパールを知っている身からすれば、とてもフレッシュに見えます。
それと、最後にウッキウキで帰ってくるハワード(パールの夫)には本当に笑いました。
ここまで映画で笑ったのは久しぶりです。
そんなハワードも最後までパールと添い遂げたことを考えれば、愛の形は人それぞれだなぁなんて考えたり…
最後に、相変わらずパンフレットが素晴らしいです。
レトロな雰囲気と汚れやスレまで再現しています。
いまから最終作である「MaXXXine/マキシーン」に期待してやみません。