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一瞬でのめり込む面白さを持った怪作「Inscryption」感想 レビュー

※本作は何を語ってもネタバレになりかねない作品です。楽しみを奪わない程度にネタバレを防ぎながら記事を書きました。それでも事前情報を入れたくない方は読まないことを推奨します。

 

1.Inscryption(インスクリプション)ってどんなゲーム?

デッキ構築型のローグライク(ト)ゲームです。

カードゲームで敵を倒しながら、パズルを解いてストーリーを進めます

自分でデッキを構築します。

ランダム要素も高く、チート級のカードが偶然手に入ったり、運が良ければ自分で作れたりします。

カードゲームのほかに豊富なパズル(謎解き)も用意されています。

ストーリーは「強制的に謎のカードバトルに参加させられた主人公が現在の状況から脱出を計る」というものです。

サイコロジカルホラーという言葉が銘打たれていたり、おどろおどろしい雰囲気を持ったゲームですが、怖くはないのでホラーが苦手な方も大丈夫です。

 

2.どんな人におススメ?

・カードゲームが好きな人

・カードゲームを遊んだことが無い人

ボクはカードゲームを遊んだことがありませんが、すぐにルールを理解できました。

それほど、このゲームはキャッチーでシンプルな作りをしています。

カードゲームを遊んだことが無い人でもすぐに楽しめるでしょう。

・パズル(謎解き)が好きな人

・考察が好きな人

・メタ構造、ネタ要素が好きな人

・奇妙なゲームが好きな人

 

3.良かったところ

・ゲームへの導入がスムーズなところ

カードゲームのルールを理解させるのが上手いです。

必要十分な情報だけを上手に教えてくれます。

つまづきそうな部分もちゃんと説明してくれます。

ゲームを楽しむための誘導が非常にスムーズです。

・良い意味でカードゲームのルールが穴だらけ

チート級のカードやコンボが簡単に作り出せます。

そういったものを考えるのも楽しいですし、それで敵を圧倒したときの爽快感がたまりません。

合法的なチートが出来るカードゲームです。

・序盤はライフが2つあるところ

カードゲームで負けたら最初からやり直しなのですが、序盤はライフが2つあります。

つまり一度は負けても大丈夫なのです。

もしライフが一つだけだったらあまりに面倒だったと思います。

・程よいランダム要素

運に偏りすぎず、ちゃんと実力も発揮できる程度のランダム要素が良かったです。

良いカードを引けるかどうか、常にワクワクしながらプレイ出来ました。

・壮大なストーリー

「壮大なストーリー」という言葉はあまりに手垢が付きすぎて陳腐に聞こえるかもしれません。

しかし、このゲームのストーリーは壮大です。

やれば分かります。

・スーファミやPS2のようなグラフィック

スーパーファミコンのようなドット絵もありますし、プレステ2のようなポリゴンも使われています。

個人的にノスタルジーを感じられて良かったです。

このスクリーンショットを見てください。PS2のゲームみたいじゃないですか?

4.ちょっと気になったところ

・カードゲームの視認性が悪い

ゲームの状況が一目で確認できません。

盤面の状況はどうなっているのか?ライフはどれだけあるのか?一目では把握できない作りになっているのはいただけません。

・パズルがやや理不尽なところがある

自分は何とか攻略を見ずに最後までクリアしましたが、人によっては詰むかもしれません。

ちょっとヒントの出し方が良くない部分があります。

・後編のゲームプレイが苦痛だった

詳細は珠音真珠の感想で説明します。

 

5.今からプレイする方へアドバイス

・「ちらつきエフェクト」や「画面の揺れ」は消した方が良い

良くも悪くも演出過多なゲームです。

画面の明滅は目が痛くなります。

設定から消した方が快適にゲームができるでしょう。

・オコジョたちの話はちゃんと聞こう

ゲームを進めるためのヒントを与えてくれます。

・ネコは強い

このゲームは速攻が強いゲームです。

どれだけ早く攻撃態勢を作り、一気に敵を叩けるかが重要です。

生贄にしても死なないネコのようなカードはとても強いです。

・無駄にデッキを厚くしない

いらないカードは徹底的にデッキから排除しましょう。

前述した通り速攻が強いゲームなので、デッキが分厚くなり引きが悪くなるだけで不利です。

「強いカードをどれだけ入れるか」よりも「無駄なカードを入れない」ことを意識しましょう。

・二又、または三又に攻撃できるカードはチート

2方向、あるいは3方向に攻撃できるので、実質攻撃力が2倍or3倍あります。

これらのカードを焚火で強化すると簡単にチート級カードが作り出せます。

とくにマンティスゴッドは完全にチートと言っても良いでしょう。

・コストが高く強いカードよりもコストが低く使いやすいカードを

デッキ構築にもよりますが、コストが高いカードよりもコストが低く使いやすいカードを強化した方がプレイが安定します。

とくに「阻まれた狼」などを強化すると使いやすいでしょう。

・熟考するよりも色々試しながらやってみる

じっくり熟考するよりも、気楽に色々試しながらやってみるべきです。

敵は凶悪な初見殺しを平気で仕掛けてきますし、カードゲームなので引きの運にも左右されます。

本当に勝てなくなり詰まったら熟考するくらいでちょうど良いです。

・なるべくネタバレ無しでゲームをプレイして欲しい

 

6.珠音真珠の感想

語るのが難しいゲームです。

何を語ってもネタバレになりますし、何を語ってもネタバレになるという文章すらネタバレになってしまいます。

とにかく「頭の良い人が作ったゲームなんだろうな」という印象です。

 

まず最初に、ボクはこのゲームを心から楽しんだし、高く評価しています。

ボクはカードゲームをプレイしたことがないのですが、ゲームへの導入が上手いお蔭で、すぐに楽しむことができました。

ルールそのものもシンプルだし、過不足なくゲーム側から説明があるので、カードゲーム未経験者でも安心です。

 

試しに、ボクの家に遊びに来た友人2人に本作をプレイさせてみました。

友人2人もカードゲーム未経験者ですが、すぐにルールを理解し、ゲームを楽しんでいました。

2人とも「このゲーム面白い!」と口をそろえて言っていました。

カードゲームと聞くと、覚えることが多く、複雑で難しいものを想像するかもしれませんが、このゲームではそんな心配は無用です。

気になったのならプレイしてみるべきです。

一瞬でのめり込む面白さがインスクリプションにはあります。

 

ゲームバランスを崩壊させるほどのチートカードやコンボをぶつける爽快感もたまりません。

本作のカードゲームはよく考えてみればルールが穴だらけなのです。

ここがゲームの面白いところで、完璧にルールが整備されたゲームよりも穴がある方が楽しいのです。

敵とプレイヤーの条件も平等ではないですし、敵も平気でチート行為に近いことをしてきます。

そのため、こちらも容赦なく敵を叩きのめすことができます。

(このカードを作っちゃったらバランスが崩壊してつまらなくなるんじゃないか…)そんな遠慮は要りません。

というよりも、そんな遠慮をしていたら勝てない程度のゲームバランスになっています。

合法的なチート行為で敵を叩きのめしましょう。

 

さて、ここから先はより踏み込んだ話になります。

心苦しいのですが、少し批判的な意見も多くなります。

また、楽しみを奪わない程度のネタバレをします。

 

本作は、大きく分けて「前編、中編、後編」と3つのパートに分かれています。

やることは、どのパートでもほぼ同じです。

カードゲームで敵を倒し、パズルを解いてゲームを進めます。

 

個人的に、「前編=神ゲー」「中編=面白い」「後編=苦痛」という感覚でプレイしていました。

前編は本当に神ゲーです。

一気にゲームに胸ぐらをつかまれ、このゲームにのめり込まされました。

 

中編は、前編での不満点が解消されるので、当然面白いんです。

前編での不満点とは、「視認性の悪さ」と「操作のわずらわしさ」です。

中編になるとゲームの絵面が大きく変わります。

カードゲームの状況が一目で確認できるようになるため、視認性の悪さが解消されます。

3D空間での移動などの操作のわずらわしさも解消されます。

前編での不満点、あるいは「こういう仕様だったらもっと面白いのに」という部分がブラッシュアップされてプレイヤーに提供されるのです。

これには本当に唸らされました。

「このゲームの製作者は分かっている」と思わされた部分です。

 

しかし、良いことばかりではありません。

カードゲームに新たな要素も追加され複雑化し、パズルも増え、何をするにも謎解きを要求されるようになります。

面白いのですが、ゲームとして胃もたれし始めてきます。

それに、一部パズルの難易度が適切だと思えません。

ボクはクリアして答えを知っているので、今では良くできた問題だとも思えるのですが、(分からないのも無理は無いよなぁ)と思ってしまいます。

 

そして、問題の後編です。

後編は苦痛という他ありませんでした。

中編で解消された不満点が再び帰ってきます。

またしても視認性が悪くなり、操作もわずらわしくなります。

中編よりさらにカードゲームも複雑化し、相変わらず何をするのにもパズルを強要されます。

おそらく、製作者もプレイを飽きさせないように変化を付けようとカードゲームのルールを複雑化させているのだと思います。

しかし、ボクはここまで来ると面倒で仕方ありませんでした。

個人的に本作の「とっつきやすさ、誰でも簡単にカードゲームを楽しめる」部分を一番評価しているので、ボクには合わなかったんだと思います。

 

この頃になると何が起こるのか?

「ずっとパズルだけを解いている」気分になるんです。

複雑化したカードゲームはパズルと同義です。

爽快感や楽しさは消え失せ、うんざりとしてきます。

正直に言うと「いつまでこれをやらなければならないんだ」と思ってしまいました。

 

ボクにとっては後編は苦痛以外の何物でもありませんでした。

しかし、後編を乗り越えたあとのエンディングや演出は素晴らしいものだったので、乗り越えて良かったと思っています。

 

ネガティブなことも多く書いてしまいましたが、このゲームが面白いのは間違いありません。

誰でも簡単にカードゲームの面白さを味わうことができますし、とても刺激的なゲーム体験となることは保証できます。

 

ボクが前述した不満点はゲームそのものが持つジレンマです。

これはゲームであれば良く起こることなのです。

つまり、最初はシンプルで楽しかったものが、複雑化し難易度も上げられることによって楽しさよりもわずらわしさが勝ってしまった経験は誰もがあるでしょう。

共感してくれる方がいれば嬉しいのですが、あの名作バイオハザード4でも、ぶっちゃけ最初の村をプレイしているときが一番楽しいのと一緒です。

 

ともかく、少しでも興味を持ったなら絶対にプレイするべきタイトルです。

このゲームが面白いのは間違いありません。

それは絶対に保証します。

 

奇妙なゲームです。

絶対にハマります。

そして誰かに語りたくてたまらなくなります。

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