格闘ゲームで生き残る

鉄拳7 なぜクソキャラと呼ばれたのか?「リロイ・スミス」解説

目次

◆リロイスミスが炎上するまで

◆リロイスミスの問題点

◆リロイスミスの失敗に学べること、失敗がもたらしたもの

◆最後に伝えたいこと

※ゲームを知らない人でも読めるように分かりやすく記事を書きました。あまりマニアックな方向へ行かないように心掛けて記事を書いています。

 

◆リロイスミスが炎上するまで

鉄拳7のシーズン3にて「リロイ・スミス(以下リロイ)」というキャラが追加されました。

詠春券(えいしゅんけん)で戦うキャラです。

まずは公式のPVをご覧ください。

とても格好良いですね。

キャラのビジュアルも技のモーションも素晴らしいです。

格ゲーのみならず、ゲームのなかでもトップクラスの格好良さではないでしょうか。

 

このPVを見てテンションが上がらない鉄拳プレイヤーはいないはずです。

ボクはとても楽しみにリロイが追加される日を待っていました。

 

そして、実際にリロイが追加されてみると…

あまりの強さに「ぶっ壊れキャラ」のレッテルが貼られることとなります。

誰がどう見ても他のキャラクターよりも頭が3つほど抜けていました。

しかし、新しく追加されたキャラが”調整不足”であるのは格ゲーではよくあることなのです。

予期せぬバグが見つかったり、明らかに強すぎる技が見つかるのは格ゲーではありがちです。

その時点では、鉄拳界隈でのみリロイが叩かれているような状態でした。

「リロイはクソキャラである」と鉄拳プレイヤーに認知されるに留まっていました。

 

問題は、「EVO JAPAN 2020」という世界大会です。

出場選手の大多数がリロイを使用するという異常な光景が見られました。

あまりにリロイが強すぎて、大会で結果を出すためにはリロイを使わざるをえないのです。

それほどリロイは強かったんです。

もちろん、大会優勝者の使用キャラもリロイでした。

 

ボクはリアルタイムで当時の大会を見ていました。

実況や解説もリロイを非難する始末で、リロイはブーイングを浴び、それ以外のキャラは声援を浴びるという異様な光景です。

会場は明らかにシラけた空気となり「リロイVS他キャラ」という構図が作られてしまいました。

大会の優勝者であるBook選手が勝利インタビューで語った言葉も印象的です。

「リロイの悪評を知っていたし、リロイを使うことにプレッシャーを感じていたが、リロイを使わないことは逆に相手に失礼である」(分かりやすくするために言い回しを改変しています)

勝利インタビューでこのような発言をしました。

 

この様子は各ゲームメディアでも取り上げられ、炎上事件としてゲーマーに記憶されることとなります。

 

余談ですが、「Knee」という鉄拳のプレイヤーがいます。

鉄拳プレイヤーであれば誰もが知っているトッププレイヤーです。

10年以上も前から最前線で活躍する、鉄拳の神と言っても過言ではない方です。

そのKneeさんですら「リロイはチートである」という旨の動画をYouTubeに投稿しました。

Kneeさんはとても気位の高い方です。

これまで絶対に鉄拳の批判はしませんでした。

そんなKneeさんですらリロイには苦言を呈しました。

それほど、当時のリロイは強かったんですね。

 

長くなったので簡単にまとめると、、

1.リロイスミスという新キャラが追加される

2.ゲームバランスが崩壊するほどの強さを持っていた

3.世界大会でその様子が多くのゲーマーの目に触れて炎上した

以上がリロイが炎上するまでの経緯です。

 

◆リロイスミスの問題点

3つに分けて解説します。

フレームなどの小難しい話はあえてしません。

リロイが強すぎることは何度も書いたとおりです。

鉄拳のプロゲーマーであるノビさんですら「リロイに勝つためにはリロイを使うしかない」と言わしめたほどです。

では、具体的に何が強かったのか、そして強さの質について切り込みます。

 

1.他キャラのアイデンティティを奪ってしまった

リロイは新キャラとして追加されました。

しかしその実は「既存のキャラの技を寄せ集めたキメラのようなキャラ」だったのです。

キメラとは、ライオンの頭、山羊の胴、蛇の尻尾を持つ、神話上の怪物です。

リロイを形容するのに相応しいでしょう。

 

たとえば、リロイには双龍門(そうりゅうもん)という技があります。

相手の攻撃に合わせて発動することによって、相手の技を捌きながら反撃する技です。

格ゲーでは、”当て身””返し技”と表現されることが多いですね。

鉄拳では、頭、肩、肘、膝などで攻撃する技は当て身が出来ないように設定されています。

また、当て身をされた際に特定のコマンドを入力することによって、当て身返しをすることも出来ます。

ところが、リロイの当て身は全て捌きます。

当て身返しも出来ません。

さらに当て身の受付時間も長く、とても使いやすいものになっています。

鉄拳には当て身を持つキャラが複数いますが、リロイの当て身だけ明らかに飛び抜けて強いです。

これだけでもリロイが優遇されていることが分かります。

 

そして、これはあくまで氷山の一角です。

他のキャラが持っている技をさらに強化したものをリロイは複数持っていました。

ストリートファイターで例えましょう。

ガイルより優秀な弾を持ち、ザンギエフより強い投げを持ち、バイソンよりも使いやすい突進を持ち、豪鬼よりも攻撃力がある、それがリロイというキャラです。

 

そのようなキャラが現れるとどうなるのか?

他のキャラのアイデンティティを根こそぎ奪ってしまいます。

上記の例えで言えば、ガイルもザンギエフもバイソンも豪鬼も使う意味が無くなってしまいますよね。

リロイという完全上位互換のキャラがいるのですから、わざわざ下位のキャラを使う理由が無くなってしまいます。

鉄拳プロゲーマーたぬかなさんも「もうシャオユウを使う意味がない、リロイを使っておけば良い」という発言をしていたのを目にしました。

 

このような経緯からリロイは他キャラ使いからも大いに嫌われることとなります。

当時は「リロイに調整が入るまでは鉄拳をやめる」と言い出す人までいたほどです。

とても悲しいですよね。

 

2.リロイだけに許された不公平な壊れ技

リロイだけが優遇されているという根拠について、この技も紹介しなければなりません。

それが、杖戒連撃(じょうかいれんげき)という杖を使用した攻撃です。

1試合に1回のみ(1ラウンドではなく1試合です)許された技です。

コンボ始動技であり、この技が当たると相手の体力が半分ほど消し飛びます。

しかも、当時はガードさせても反撃を受けるどころか、大幅に有利を取れる技でした。(現在はアップデートでガードをさせて不利になりました)

このような、1試合に1回のみ出せる切り札のような技をリロイは持っています。

もちろん他のキャラは持っていません。

格闘ゲームに相応しくない競技性を無視した不公平な技です。

リロイがひんしゅくを買うのも当然です。

ストリートファイターで例えるなら、1試合に1度だけノーゲージで好きなタイミングでCA(超必殺技)を使えるようなものです。

しかもガードされても反撃どころか有利を取って攻めを継続できます。

完全にぶっ壊れています。

 

3.プレイヤーのやり込みを否定するほどに簡単

リロイはとても扱いが簡単なキャラです。

誰でも扱えるほど操作難度が低いです。

リロイは2019年12月に追加されたキャラですが、炎上を引き起こしたEVOの大会は2020年1月に開催されました。

大会では猫も杓子もリロイだらけだったわけですが、これは出場選手がこれまで使っていたキャラからリロイに乗り換えたということでもあります。

追加されてから2ヵ月も経たない新キャラが大会で猛威を奮い、優勝までかっさらったのです。

それほどリロイというキャラは操作難度が低く簡単なキャラなのです。

出場選手のほとんどが、これまで自分がやり込んだキャラを捨ててリロイをピックしました。

それが観戦者の目にどう映ったのか、大会の空気にも表れてしまいました。

ビジネス的な観点から見れば、新キャラ(DLC)は強くて簡単にするべきなのかもしれません。

強くて簡単なキャラは人気がでますし、買いたい人が増えるでしょうから。

しかし、強すぎるというキャラ性能も相まって、リロイを使っているプレイヤーまで叩かれるようになってしまいました。

EVO優勝者のBook選手の勝利コメントがそれをよく表しています。

これは絶対に良くありません。

格ゲーでは、強いキャラは良いですが、強くて簡単なキャラは嫌われる傾向にあります。

初心者向けに作られたであろう強くて簡単なキャラは、上級者が使えばとんでもないことになるのは火を見るよりも明らかです。

逆に、強くても扱いが難しいキャラは、その操作難度と職人的な要素が相まって、人気がでることが多いです。

また、上記したキャラのアイデンティティに関わるもので、「より強く、より簡単なキャラがいる」というのは、他キャラ使いからすれば面白いはずがありません。

どうせやり込んでもリロイに勝てないのなら、やり込むのが馬鹿らしくなるのは当然です。

これはユーザー離れにも繋がる深刻な問題だと思います。

リロイが嫌われてしまった理由に、「簡単かつ強い」というのもあります。

 

リロイが強いことは何度も伝えてきました。

それに加えて、強さの質が悪かったのも事実です。

プレイヤーから嫌われてしまう強さを持ったキャラだったのです。

 

◆リロイの失敗に学べること、失敗がもたらしたもの

3つに分けて書きます。

さまざまな問題を抱えたリロイでしたが、学べることもあります。

またリロイがもたらした功罪もあります。

 

1.キャラを作る際には引き算もするべき

ボクなりにリロイというキャラを一言で表すのなら、「足し算だけで作られたキメラ」という表現になります。

たとえば、パワーがあるキャラを作るのなら、その代わりにディフェンス能力を差し引く、あるいはパワーもディフェンスも強くするのならスピードを差し引く。

このように、強い部分と弱い部分の差し引きによってキャラを調整するべきだと思います。

しかし、リロイは徹底して足し算だけで作られた印象を受けます。

あの技も付けよう、この技も付けよう、ついでにこういう部分も強くしよう、せっかくだから特別にリロイだけにこういうシステムを付けよう。

プレイヤー側のボクが言うのはおこがましいですが、きっと製作者は凄く楽しんでリロイを作ったんじゃないかと推測します。

キャラバランスなどの観点を無視すれば、リロイはまるで夢のようなキャラです。

結果的に、ちょっとやりすぎてしまいましたが。

個人的に、双龍門を始めとした各種カウンター技や、強力かつ使いやすい豊富な連携は凄く良いと思います。

だって詠春券ですからね。

ただ、下段まで強くしたり(=崩しが強い)、コンボ始動技も優秀でコンボ火力も上げたりするのはやりすぎです。

もう詠春券でも何でも無いですし、コンセプトがよく分かりません。

キャラ調整をする際には足し算だけではなく引き算もしっかりしなければなりません。

また、現在ではアップデートにより数々の弱体化を受けたリロイですが、これは使い手のモチベを大きく削ぐと思います。

強すぎたのだから弱くされるのは当前ですが、使い手からすれば、これほどつまらないことはありません。

自分の使っているキャラが弱体化されてモチベが下がってしまったという経験は、格ゲーマーならば経験したことがある方も多いはずです。

強力な武器を取り上げられ、これまで出来ていたことが出来なくなる、これは本当につまらないんですよ。

「弱体化」されることによってバランス調整がされる、「強化」されることによってバランス調整がされる、結果的にバランスが整ったとしてもプレイヤーの受ける印象は大きく変わります。

少し想像してみて欲しいのですが、「自分の使うキャラが弱くなり続ける」、そんなゲームを続けたいと思いますか?

強すぎたリロイでしたが、弱体化の一途を辿るその姿は、使い手によるユーザー離れも引き起こしたと思います。

結局は最初からあまりに強すぎたのです。

 

2.もっと早くアップデートするべきだった

結果的に、もっと早くリロイを弱体化するパッチを配布するべきでした。

そうすれば大会での炎上も防げたかもしれません。

コストがかかっても結果的にはそちらの方がメーカーにとって良かったと思います。

しかし、格ゲーのコスパは異常です。

ソシャゲーのように定期的に課金しなくてもずっと遊ぶことができます。

一度ゲームを買えば、キャラの調整、バグの削除、新システムの追加などなど、全て無料で受けることができます。

DLCを除けば、基本的に格ゲーはずっと無料で遊んでいられるのです。

プレイヤー側は「もっと早く調整してくれよ」「あのキャラ強すぎだろ」なんて好き勝手に言います。

もちろんボクも言います。

でも、メーカーだって必死だと思います。

とくにコロナ禍にも関わらず、ユーザーに無料でゲームの調整を行ってくれるのは本当にありがたいことです。

ユーザーには計り知れない苦労と苦悩があると思います。

ですから、「もっと早く調整していれば…」なんて言うのは失礼にあたるかもしれません。

しかし、リロイが炎上した理由として、その強さが世界大会で多くの人の目に触れてしまったというのも事実です。

あくまで結果的にもっと早く調整するべきであったのであって、ボクはメーカーの姿勢や修正の遅さを否定したいわけではありません。

 

3.キャラの批判を堂々と出来るようになった

これはリロイの功罪とも言うべき点です。

EVO2020を筆頭に、表舞台でもキャラの批判が堂々と行われることが増えたと思います。

2021年3月にTOPANGA(トパンガ)リーグという鉄拳の大会が開催されました。

そこで優勝したプロゲーマーである弦選手が勝利インタビューで以下のような発言をしました。

「前回強キャラに負けたのが悔しくて、自分も勝つために強キャラを仕上げて来た、優勝したから言わせてもらいますけどシンプルにキャラが強いんですよ、次の調整には期待しています」(分かりやすくするために言い回しを改変しています)

自身の使ったキャラ(ファーカムラム)を名指しで批判しました。

表舞台でキャラの批判をするなど、これまではありえなかったことです。

さらにリロイに関しては、鉄拳のプロデューサーである原田さんも、自身のYouTubeチャンネルにて調整の失敗を認めています。

9分30秒辺りから再生すればリロイの話を聞けます。

格ゲーに関して非常に興味深い話も聞けるので、ぜひ視聴をおススメします。

 

このように、リロイの一件を引き金に、格ゲーコミュニティの風通しが良くなった気もします。

良くも悪くも忌憚のない意見が表舞台でも飛び交うようになりました。

リロイの功罪とも言えるのではないでしょうか。

 

◆最後に伝えたいこと

ボクは鉄拳シリーズを心から愛しています。

鉄拳7はアーケード(ゲーセン)の時代から現在まで途切れずプレイしています。

ボクはリロイというキャラを批判するために記事を書いたのではありません。

ただ、鉄拳の歴史の一つとして楽しんで欲しくて書きました。

 

現在はリアルタイムでゲームの調整がされる時代です。

強すぎるキャラがずっと放置されるなんてありえません。

ですから、「こんなこともあったんだね」と笑って欲しい気持ちで書いています。

そういったところも含めて、現代のゲームの楽しみ方ではないでしょうか。

 

当時、ボクは鉄拳仲間と対戦していて、リロイにだけは勝てませんでした。

ボクはドラグノフを使っていたのですが、どうやっても勝ち筋が見えないのです。

ドラグノフは攻撃的なキャラで、相手にガードをさせて有利な技を振りまわしながら押し込むキャラです。

しかし、リロイの双龍門を始めとした強力なカウンター技を前に為す術がありませんでした。

攻めれば攻めるほどドラグノフが逆に不利になるという構図に、ボクの心は折れました。

「マジでクソキャラだわ」というボクの負け惜しみに、「うん、リロイ強すぎだね」と答える仲間。

それも今では良い思い出です。

 

eスポーツという言葉ができてゲームが盛り上がっている時代において、まだまだ格ゲーはマニアックな分野です。

そのなかでも鉄拳は一部の人にしか認知されていないでしょう。

ですから、鉄拳を知らない人にも楽しんで欲しくて書きました。

鉄拳の歴史を少しでも楽しんでいただければ幸いです。

 

また、書き残すという行為は人類への貢献です。

それがどんな内容であれ、書き残して人々に情報を伝える役割を果たすのなら、それは人類の財産となります。

少しでも自分が大好きな格ゲーに貢献したくて記事を書いたのもあります。

 

現在のリロイは度重なるアプデを経て、程よい強さになりました。

決してクソキャラではありません。

 

鉄拳は本当に素晴らしいゲームです。

こんなに面白いゲームがプレイできてボクは幸せです。

作ってくれてありがとうございます。

いつも対戦してくれてありがとうございます。

そして、こんな長文を最後まで読んでくれてありがとうございました。

 

ちなみに、リロイのPVでも使われている楽曲にて、「ジャスティンウォン」という空耳があります。

そこは「ジャストリワード」と言っています。

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