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※楽しみを奪わない程度に少しだけネタバレを含む記事です。ただ、本作は一切のネタバレ無しで見た方が絶対に楽しめるので、未見の方は要注意です。
「ゲットアウト」、「アス」などで有名なジョーダンピール監督の最新作(2022年9月現在)です。
社会的なメッセージ性とエンタメ性が見事に融合した作品であり、ぜひ映画館で見るべき作品です。
【落ち目の牧場を経営する主人公が、一攫千金のためにUFOを撮影しようと奔走する】というのが大まかなストーリーです。
・超常現象などのオカルトファン
・メッセージ性の強い作品が見たい方
・怪獣やクリーチャーが好きな特撮ファン
・映画好き
結論から、ジョーダンピール監督の作品のなかで一番好きな傑作です。
なぜなら、映画的な面白さ(つまりエンタメ)と、観た者に対してのカタルシスをしっかり与えてくれる作品だからです。
ジョーダンピール監督は「ゲットアウト」、「アス」、「キャンディマン・リメイク版」と立て続けに傑作を発表してきました。
社会的なメッセージ性を色濃く反映させた作りは、多くの映画ファンを惹きつけたと思います。
ボクもその一人なワケですが、正直に言うと、食傷気味だったのが本音です。
本作であるNOPEでも、また”人種差別的なアレ”かな?と思ってゲンナリしてしまったのですが、全然違いました。
もちろん、社会的なメッセージ性は本作でも健在ですが、これまでの作品と比較して大きく違う部分が、映画的な面白さです。
しっかりエンタメしていますし、最後にはちゃんと気持ち良くさせて映画館から帰してくれるんです。
社会的メッセージなんてお堅い部分に対する感想や考察は、ほかのインテリ系レビュアーにぶん投げます。
ボクがもっとも良かったと感じた部分が、UFOの正体とその魅せ方です。
もう怪獣グラビアとして最高でしたね。
ウルトラマンシリーズの怪獣や、平成ガメラを思い出しました。
これは特撮ファンがぶち上がる映画ですよ。
UFOの見る者を襲ってくるという習性と、観客という安全圏から好きなだけ見ていられるという背徳感も相まって、素晴らしい体験ができたと思います。
さらに、本作は社会的な負け組が尊厳を取り戻す話でもあるんですよ。
これが嫌いな人はいないでしょう。
ずっと後味が悪い(これは誉め言葉でもありますが…)作品ばかり作り続けてきたジョーダンピール監督が、ここに来て普通のエンタメを貫いてくれます。
ちゃんと最後に気持ち良くさせてくれます。
これだけで大満足です。
映画ファンであれば、絶対に劇場へ駆けつけて見るべき作品です。
【こういうのが見たかった】という願望を叶えてくれた傑作です。
※余談
本作のメッセージ性の部分について、最後にちょっとだけ触れたいと思います。
本作では、「見る」ということの暴力性について描いている作品でもあります。
現代では、SNS(ネット)やスマホ(ガジェット)の普及によって、あらゆる場面を切り取られて拡散されます。
そして、多くの人の目にさらされることになります。
ある種、現代の暴力ですよね。
悪意無く、ただ単に好奇による目だったとしても、見られる側からすれば嫌な思いをすることもあるでしょう。
ボクのつまらないエピソードを少しだけ紹介させてください。
某大手の自動車会社であるH社に勤めていた頃の話です。
H社では、株主の方がよく工場見学で来られます。
ボクはライン作業者として、車体に部品を取り付ける仕事をしていました。
見学者の方はボクの作業も楽しそうに観察していきます。
(見せ物じゃねぇぞ、クソッタレ!)と、心の中で見当違いの怒りを毒吐くボクを尻目に、見学者の方は「うわぁ凄いなぁ」なんて言いながら通り過ぎて行きます。
ある日、ボクは何となく見学者の方へ振り返ったのです。
ボクに自覚はありませんでしたが思っていることが表情にも出ていたんでしょうね。
相手(見学者)をにらみつけるような形になってしまったのです。
相手はバツが悪そうに、サッとボクから視線をそらしました。
そんなくだらないエピソードを本作を鑑賞して思い出してしまいました。