謎のチューブに閉じ込められた主人公が、死のトラップを掻い潜り脱出を図ろうとする作品です。
シチュエーションスリラー映画です。
ゴア表現(グロ)もエグいです。
閉所恐怖症の方は本当に辛いと思いますので、注意した方が良いです。
・スリリングな映画が見たい方
・SFチックな作品が見たい方
名作映画である「CUBE」をベースに、「SAW」と「H・R・ギーガー」(エイリアンをデザインした有名なデザイナー)で味付けしたような作品です。
謎の空間に閉じ込められて、脱出を図ろうとする流れは「CUBE」っぽいです。
ケレン味あふれる殺人トラップは「SAW」っぽいです。
謎の機械生物であったり、まるで化け物の胎内にいるような場面は「HRギーガー」っぽいです。
(そんなの絶対に面白いじゃん!)と映画好きの方は思うかもしれません。
実際は、見てる間はそこそこ面白いのですが…見終わってみると微妙なんですよね…
娘を亡くし自暴自棄になっていた主人公が、見知らぬ男の車に乗り込むところから物語は始まります。
出会った男が実は殺人鬼であることに気付きますが、時すでに遅し。
目を覚ますと、謎の閉鎖空間に閉じ込められてしまいます。
そこは凶悪な殺人トラップが無数に仕掛けられたチューブ状の迷路だったのです。
チューブと聞けば、何だか柔らかいゴム状のものを想像するかもしれませんが、本作のチューブは「ダクト」と言い換えた方がイメージしやすいと思います。
スパイ映画の主人公が屋内に侵入するときによく使うアレです。
閉所を這う場面がずっと続くので、閉所恐怖症の方は見るのを止めた方が良いかもしれません。
(えぇ?本当にここを行くの?狭すぎて無理でしょ?!)みたいな場面ばかりです。
この辺りの演出は本当に上手くて、見ているこっちまで息がつまります。
途中まではスリリングで凄く面白いのです。
最初は傑作だと思いました。
殺人鬼の車に乗り合わせてしまう導入部であったり、凶悪な殺人トラップに傷付いていく様子は生々しいのですが、物語が進むに連れてどんどん抽象的になっていきます。
恐らく、「これまでの人生を捨てて生まれ変わる、喪失と再生」のようなものを描きたかったのだと思います。
それは良いのですが、(そこはさすがに説明責任があるだろ!)という部分も完全に投げっぱなしているのはいただけません。
結局チューブって何?
殺人トラップは何だったの?
なぜ主人公が閉じ込められることになったの?
などなど。
疑問は何ひとつ明かされません。
考察の余地がある。
崇高なメッセージ性。
アーティスティックな表現。
これらを盾に、説明から逃げすぎです。
主人公の体験したものが、「主人公の内面を描写しただけのもの、生まれ変わりの試練」などと解釈することも出来ます。
そこに具体的な設定などなく、説明を求めるのも野暮かもしれません。
しかし、それを許容するのなら、あまりに何でも有り過ぎて創作物として不誠実だと思います。