とある夫婦が孤児を引き取ると、その子が実は…というホラー映画です。
R15指定ということで、性的な描写や残酷描写がありますが、そこまでグロさはありません。
・質の高いホラー映画が見たい方
・俳優陣の高い演技力を堪能したい方
・家族が侵食され崩壊していくようなホラーが好きな方
本作を見るのは三度目になります。
本当に良く出来た上質なホラー映画です。
(この作品が2009年に公開されたという月日の早さがもっともホラー)
全体的に品が良いんですよね。
性的な描写や残酷描写はあるのですが、グロさは感じない(ドン引きしない)程度に留めています。
その塩梅が絶妙で、コンプラギリギリというか、下品にならないレベルでどれも描写されているんですよ。
俳優陣の演技も素晴らしいですね。
エスターを演じた「イザベル・ファーマン」の顔面力は言うまでもありません。
混乱することを言いますが、「演技をしている演技」が上手いんですよ。
明らかに腹のなかでは違うことを考えている、本当は怒っているのに作り笑いをしている、そのような繊細な演技を分かりやすく観客に伝えてくれます。
本作のレビューを読むと、「夫が無能過ぎてイライラする」という意見をよく見かけますが、それは明らかに監督が狙ってやっていることです。
夫役に「ピーター・サースガード」を抜擢したのは見事な采配です。
その顔面から漂う無能感、人としての弱さ、これを自然に出せる俳優はそうそういません。
夫にイライラしたということは、この映画を楽しんだ何よりの証明になります。
エスターの本性に最初に気付いたのが「妻」である、というのも良いですね。
女特有の勘が働いている感じ、女同士にしか分からない、お互いに意識している感じを上手く描写しています。
ずっと薄暗い冬というのも舞台設定として素晴らしいです。
気味が悪く、陰鬱な本作とよく合っています。
ボクは雪国出身なのですが、雪国の冬って本当にあんな感じです。
ずっと薄暗いんです。冬季うつ病というものがあるくらいですからね。
陽が当たらなくなるんです。
子どもたちが、家から離れた小屋で、タバコを吸ったり、ポルノを楽しんでいるシーンも最高です。
ボクもあんなことやってました。
やっぱり「エスター」は良く出来てるなぁ、と見る度に思わせてくれる傑作ホラーです。
余談
大人気ホラーゲームであるバイオハザードに「エブリン」というキャラが登場します。
実は彼女は人間の幼女ではなく生物兵器です。
「どこにでも違和感なく潜入できるように」、幼女の姿で開発されたという設定です。
この設定は本当に秀逸だと思います。
幼女に対して警戒する人は極めて少数でしょう。
「見た目で判断してはいけない」そんな教訓をエスターやエブリンは再認識させてくれますね。