昔話をします。
ボクは正社員などなったことのない、社会的に言えば「底辺」の人間です。
そんな自分が本気で犯罪者になろうと思ったことがあります。
犯罪で飯を食って行こうと本気で考えたことがあるのです。
そのときのことを語りたいと思います。
当時のボクは某大手自動車メーカーの期間工をしていました。
毎日残業があり、ほぼ毎週休日出勤もあり、殺人的な忙しさでした。
「忙しい」という字は、「心」を「亡くす」とはよく言ったもので、本当にまともな考えができなくなるんですよ。
ボクは昔から本が大好きで、当時も休憩時間には小説を読んでいました。
あえてタイトルは伏せますが、保険金殺人を取り扱った作品を読んでいたんですね。
その作品を読んでいるうちに、自然と自分も犯罪者的な思考に染まっていきました。
小説の登場人物と自分の境遇が、本質的な部分であまりに似通っていたのです。
期間工というのは、実はそれなりに高給取りだったりします。
忙しいし、とてもキツい、しかも将来性も無い(安定しないしスキルも身に付かない)、それらと引き換えに、どんな人間でも手取りで30万前後もらえたりします。
これは言い換えるならば、自分の人生を犠牲にして高給を受けとっている状態と言っても良いでしょう。
その小説に登場する犯罪者たちも同じような境遇でした。
将来に希望を持てないので、犯罪の道へ進むしかないのです。
未来で刑務所にぶち込まれるリスクを承知で、犯罪をおかして大金を稼ぎます。
対してボクは、将来ホームレスになるリスクを承知で、未来を売り飛ばして期間工をしているのです。
【どうせ未来が無いのなら、こんなキツイ仕事を真面目にやるより犯罪をした方が得なんじゃないか?】
そんな考えが頭をよぎるようになりました。
まるで現実逃避するように、犯罪の道へ進む自分を夢想しながら働く日々が続きました。
もちろん実際の自分は、犯罪をする勇気なんて無いんですけどね。
しかし、まともな精神状態では無かったのも事実なのです。
そんなときに、自分は仕事中に倒れてしまいました。
おそらく原因は過労でしょう。
別にスピリチュアルだとかオカルト的なことを言いたいワケではないですが、自分が倒れたことにはちゃんと意味があるとボクは解釈しています。
つまり、倒れたということは、”何かが間違っている”ことを証明していることに他ならないと考えているのです。
”何かが間違っているから、何かを変える必要がある”
ボクは冷静に自分の状況を見つめ直すことにしました。
すると、当たり前ですが、犯罪の道へ進む必要など無いことに気付きます。
異常者でも無い限り、犯罪者だって好きで犯罪をしているワケではないと思います。
犯罪をおかすことによるリターンがあるから犯罪をしているのだと思います。
リターンが無ければ、犯罪者だって犯罪に手を染めることはないでしょう。
自分はどうなのか?
将来に明確な希望は無いものの、犯罪に手を出すほど困窮しているわけではありません。
たとえ働かなくとも、少なくとも1年程度は生きていけるだけの貯金がありました。
それから、半年ほど経ったころに、その会社からは退職しました。
これを読んでいる方は、(何を大げさな…)と思うかもしれませんが、本当に忙しい状態だと人はまともな思考が出来なくなるんです。
辛いときは遠慮なく休むべきです。
逃げても良いんです。
ほかの誰も理解を示さずとも、ボクがあなたの行動を支持します。
名もなき自分ですが、倒れて、精神的にもまともな状態では無かった自分が、あなたの休暇も、あなたの逃避も支持します。
ですから、どうか無理せず、お互い何とか生き延びましょう。