怖いチンパンジーを撮ることに特化した映画「おさるのベン」感想、レビュー

※核心に触れるほどのネタバレはありませんが、未見の方は読まない方が良いでしょう
ペットのチンパンジーのベンが凶暴化して襲ってくる映画です。
・怖い映画が観たい方
・グロい映画が観たい方
アニマルホラーのなかでは”良作”に位置する作品だと思います。
良くも悪くも、『怖いチンパンジーを撮ることに特化』しています。
それは映画(映像作品)として、まず抑えなければならない部分ですし、ホラー映画であるならなおさらです。
ただし、映画(創作物)としての面白さに欠けるのも事実です。
良い点を3つ。
1.ちゃんとベンが怖い
2.ちゃんとグロい
3.綺麗でセクシーなお姉ちゃんがいっぱい出てくる
以上です。
ベンが本当に怖いです。
噛み付く、つかんで引きちぎる、鈍器で殴る。
原始的な攻撃手段だけではなく、凶器まで扱いこなします。
知能の高さを活かしたチンパンジー殺法を披露してくれます。
むしろ、頭が良すぎて、変態殺人鬼(まるで”人間”)のような印象すら抱きます。
凶暴化したベンが、よだれを垂れ流しながら襲ってくる様子は、ホラー映画の映像として文句の付けようがありません。

ゴア描写だって、かなりエグめの方です。
つまり、映像的にはそれなりに楽しめる作品ではあるのです(綺麗なお姉ちゃんがいっぱい出てくるのも眼福である)。
気になる点としては、映画としての工夫が全く見られないことです。
”情報の与え方”と”見せ方”が上手くありません。
映画の開始と同時に、ベンが凶暴化する理由が”狂犬病”であることが明かされます。
これには思わず映画館であんぐりしてしまいました。
(え?もうネタバレすんの?)
ベンがなぜ凶暴化したのか?
さすがにある程度は引っ張るべきでしょう。
その方が観客は作品に対して興味を惹かれるはずです。
ネタバレが早すぎて勿体ないです。
狂犬病だと判明したあとに、ベンが獣医師を殺害するシーンが流れます。
力任せに顔面の皮を引き剥がすという、かなりショッキングなシーンです。
これは、映画の”つかみ”として狙っているのは分かるのですが、問題があります。
”最初からベンが怖い存在として見えてしまう”からです。
獣医師を殺害したシーンのあとに、時系列的に過去に戻って、ベンと家族の交流シーンが描かれます。
しかし、ベンが獣医師を殺害したシーンを見ている側からすれば、ベンが怖くて仕方がないのです。
ベンがどれだけ大切で、家族にどれだけ愛されていたのかを描写されても、最初からベンが殺人鬼にしか見えません。
(あんなに可愛かったベンがなぜこんなことに…)というショックを味わえないのです。
ホラー映画として致命的です。
1.ベンと家族の交流を描く
2.ベンが家族にどれだけ愛されていたのか描写する
3.ベンが突然の凶暴化
4.ベンがなぜ凶暴化したのか知る
このような流れにした方が良かったと思います。
映画的に流れが上手くないです。
他に気になる部分をいくつか挙げます。
”恐怖演出をジャンプスケアに頼り過ぎ”です。
スリリングなのですが、やり口としてはあまり評価できません。
”一つの展開に対して引き伸ばし過ぎ”です。
たとえば、明らかに殺されるキャラに対しても長く描写し過ぎなのです。
(どうせ殺されるんでしょ…?)
そんなキャラに対しても、長々と尺を取るのは頂けません。
あのキャラが意外な活躍!なんて捻りの効いた展開も本作には一切ありません(ここら辺も映画として上手くない)。
チンパンジーという”フィジカル的に絶対勝てない相手に対する工夫が見られません”。
力比べでは絶対に勝てないが、知恵を振り絞って…みたいなアガる展開が無いのです(それだけにチンパンジーと殴り合いをするという脳筋シーンを見られるが…)。
”ご都合主義が多過ぎ”ます。
(なんでいま襲われなかったんだ…?なぜ助かったんだ…?)
映画的に仕方が無いのは分かるのですが、説得力がありません。
チンパンジーゆえに見逃した、という見方も出来るのかもしれませんが、それにしてはベンが賢すぎるのもマイナスに働いています。
批判的なことを多く書きました。
映画として、”つまらないわけではない”のです。
しかし、勿体ないというか、映画的に上手くいっていない部分も目立ってしまう作品でした。
前述したように、”アニマルホラーとしては良作”であるのは間違いありません。


