2025年のベスト級、素晴らしいJホラー「ドールハウス」感想、レビュー

公式サイトでは”ドールミステリー”となっていますが、ほぼホラー映画だと考えて良いと思います。
ミステリー要素もありますが、謎解きなどよりもホラー映画として捉えた方が理解が早いです。
娘を亡くしてしまった夫婦が、ドールを家に迎える(ドール界隈では購入することを”迎える”とよく表現する)。
ドールを娘の代わりとして接するうちにどんどん心身ともに癒やされていくが、どうやらそのドールには秘密があり…
そこそこのゴア表現とジャンプスケアがあります。
・Jホラーが好き
・ちゃんと怖い作品が見たい
・ホラーとエンタメのバランスが取れた作品が見たい
・怪異の正体にどんどん迫っていくような作品が見たい
今年(2025年)のベスト候補です。
素晴らしい傑作だと思います。
自分は大好きな作品です。
失礼ながら、本作はチェックしていませんでした。
どのような作品なのかはもちろん、ホラーということも知りませんでした。
夏季休暇で、近所で見られる映画を調べていたときに、評判の良さが目に付き見に行くことにしたのです。
これが大正解でした。
Jホラーの傑作に数えられる一作と言えるでしょう。
映画としての完成度が高いです。
冒頭10分(正確に時間を数えたわけではないが)ほどで、本作の傑作を確信し、スクリーンに釘付けとなりました。
カットのひとつひとつに、明確に意味があるのです。
主婦である主人公は、家に子どもたちが遊びに来ると、子どもたちの事故を防ぐために、包丁を戸棚に隠し、お風呂に水が入っていないことまで確認します。
この時点で、主人公がどのようなキャラクターなのか一発で伝わってきます。
しかし、主人公の行動も虚しく、予期せぬ事故(ネタバレを防ぐために詳細は伏せる)によって娘を亡くしてしまいます。
この展開も見事で、見ている側からしても主人公にほぼ過失はありません。
明らかに主人公に過失があり過ぎる流れだと、この時点で冷めてしまいます(なんてアホな主人公なんだ…なんて)。
悲しみに明け暮れる主人公は、偶然ドール(日本人形)が売られているところを見つけ、家に迎え入れることとなります。
これが映画の冒頭であり、10分ほどでここまで物語が進みます。
かなりスピーディーです。
ダレることなんて一切ありません。
このままのスピードで映画が進んだなら、どこに物語が着地するんだ…?なんて不安になるほどにスピーディーに物語が展開します。
それでいて、ちゃんと説明するところは説明してくれます。
どこまで絵で見せるのか?どこまで台詞で説明するのか?
見せ方のバランスが上手い上に、テンポも良い。
匠の技です。本当に素晴らしいバランス感覚です。
そして、かなり怖かったです。
(うわっ!怖っ!)と何度心の中で呟いたか分かりません。
久しぶりにホラー映画を見て、本当に怖いと思いました。
呪いの人形を迎え入れてしまったがゆえに…という、よくある王道のホラーです。
人形の髪が伸びる、勝手に動き出す、という手垢が付いたようなテンプレムーブも、その見せ方によって本当に怖く感じられます。
やはりここも、見せ方のバランス感覚が優れているのです。
静的でありながら、映像的な派手さも担保されている。
重要なシーンでは、ちゃんとケレン味たっぷりの恐怖演出をしてくれます。
それでも、決して下品には見えません。
人形の正体は何なのか??
ミステリー的な展開もワクワクしてたまりません。
素晴らしいのが、主人公の取る行動にあまり矛盾や突っ込みどころがないことです。
まずは人形を捨てる。
人形について調べる。
人形を供養する。
自分でもそのような行動を取るだろうな、と思わせてくれるので、主人公の行動に素直に乗れるのです。
主人公に乗れるということは、スクリーンの向こうで起こっている恐怖体験を共有するということでもあります。
ときには、笑えるようなギャグシーンも上手く挿入されています。
クイックルワイパーで片付けられる人形(とくにここは笑った)。
結束バンドで拘束される人形。
MRIで検査される人形。などなど。
ホラーとギャグは表裏一体です。
扱い方によって、ホラーはギャグになるし、ギャグはホラーになります。
ただ、本作のギャグは、一切のノイズになっていません。
なぜなら、前述したように、主人公の行動に矛盾が無いからです。
他人から見ればギャグのような絵面の行動も、本人は至って真面目なのです。
だからこそ、緊張感を保ったまま、笑えるのです。
ここもバランス感覚が素晴らしいです。
ひとつだけ不満があるとすれば…
途中でYouTubeを見るシーンがあるのですが、あそこまで馬鹿っぽいチャンネルにする必要は無かったと思います。
リアルと言えばリアルなのですが、ちょっと浮いてる感じが否めません。
もっと静的で、学者肌のチャンネルの方が雰囲気に合っていたと思います。
チャッキー??
アナベル??
ミーガン??(ミーガン2の劇場公開が無くなったのは本当に残念…)
日本には「礼」(”あや”と読む、本作の人形の名前)がいるぜ!!
そう叫びたくなるような傑作でした。
最後に、パンフレットの紹介です。

画像では分かりづらいですが、隅の方に「噛み跡」があります。

細かいながら素晴らしいデザインです。
そして素晴らしいアイデアです。
ただ…
パンフには、鬼みたいな表情した礼の最終形態が載っていません。
そこは残念でした。あの恐ろしいデザインの礼を家でもじっくり眺めたかったです。



