鉄拳7は視聴者数で大幅にストリートファイターV(以下ストV)に差を付けられています。
大会を開催しても、圧倒的にストVの方が視聴者が集まります。
そこで、なぜ鉄拳7はストVに視聴者数で勝てないのか考察してみました。
(※ゲームの優劣を測る意図はありません。ボクは鉄拳7もストリートファイターVも両方プレイしていますし、どちらも大好きなゲームです。)
結論から「ストVの方が圧倒的に視聴者に対して分かりやすい作りをしている」ことが原因だと思います。
具体的には次の2点です。
1.プレイが可視化されている
2.キャラの個性が分かりやすく強調されている
詳しく解説していきます。
なお、ここで取り扱う視聴者とは「格ゲーはプレイしないけれど見るのは好き」くらいの人を指します。
文字通り、視聴者全員を対象にすると話がまとまらなくなってしまうので。
1.プレイが可視化されている
ストVは鉄拳に対してプレイが分かりやすく可視化されています。
たとえば、画面上にいくつかゲージがあります。
ゲージを使う要素があることが一発で伝わります。
次の画像を見てください。
通常の昇竜拳を放った場合↓
ゲージを消費したEX昇竜拳を放った場合↓
明らかにEX昇竜拳の方が派手です。
キャラが黄色に点滅し、エフェクトも派手になっています。
ゲージが消費されたことに気付く方もいるかもしれません。
同じ技でも違いがあることが分かります。
たとえ昇竜拳を知らない人が見たとしても「プレイヤーが何か凄いことをした」ことが伝わるのです。
鉄拳には「最速風神拳」という技があります。
鉄拳の華とも呼べる技で、高度なコマンドテクニックを必要とします。
しかし、視聴者から見た場合「最速風神拳とは何なのか?」という前提知識が無ければ、その凄さが伝わりません。
「風神拳」と「最速風神拳」の違いも分からなければ、「右アッパー」との違いも分からないでしょう。
つまり、画面上からプレイヤーのやっていることが読み取れないのです。
ストVは「必殺技」がちゃんと視聴者に伝わるように作られています。
たとえゲームを知らない人でも「何か凄いことをしている」ことが分かるようになっています。
対して鉄拳は何が「必殺技」なのか知っている人でなければ伝わらないのです。
前提知識の無い人からすれば、あまり楽しめないでしょう。
次は「Vトリガー」です。
下の画像を見てください。
とても派手ですね。
これも視聴者からすれば分かりやすい演出です。
たとえVトリガーがどういうものか知らなくても「何か凄いことが起こるんだろうな」という印象を与えられるでしょう。
ネカリのように、Vトリガー後に姿が変わるキャラもいます。
これは本当に素晴らしい演出だと思います。
「よく分からないけど、ネカリはこれから凄いことをするんだろうな」という状況が伝わってきます。
ド派手な演出の「CA」(クリティカルアーツ:超必殺技)↓
こちらも分かりやすく視聴者を盛り上げてくれます。
鉄拳には「レイジドライブ」、「レイジアーツ」というシステムがあります。
どちらもレイジ中に発動できる逆転要素の高い切り札のようなものです。
しかし、そもそもレイジというシステムを知らなければ何をやっているのかよく分からないと思います。
鉄拳のレイジは体力が一定値を下回ったときに発動するのですが、こちらも知識の無い人には伝わりづらいのではないでしょうか。
体力が減るとレイジ状態へ↓
レイジ状態から「レイジドライブ」or「レイジアーツ」が出せる。
ラースのレイジドライブ↓
ラースのレイジアーツ↓
体力バーの他に、ゲージが画面上で可視化されているストVの方がシステムが分かりやすいですね。
個人的に鉄拳のレイジ状態も、もう少し分かりやすくした方が良いと思います。
カスタマイズとの兼ね合いもあるので難しいと思いますが、キャラの見た目にも影響が現れるようにし、もっと分かりやすい演出を付加しても良いのではないでしょうか。
たとえば、ロボットであるジャックは蒸気を吹き上げてオーバーヒートしたようなビジュアルになる、など。
ただ、鉄拳7にはストVには無い素晴らしい演出もあります
それが「スローモーション演出」です。
動画の2分22秒辺りは本当に凄い。
お互いの体力が一定値を下回ったときに、お互いが同時に攻撃を仕掛けると、スローモーションになる演出が入ります。
視聴者を楽しませる素晴らしい演出だと思います。
長くなったので、そろそろまとめます。
「ストVの方が圧倒的にプレイが可視化されて視聴者に伝えられている」と言えます。
細かい部分まで伝わらなくとも、プレイヤーが何をしているのか分かりやすいのです。
「いま必殺技を打ったんだな」、「いま凄いことをしたんだろうな」、「これから何かが起こるんだろうな」と視聴者に伝わる作りをしていますね。
さらに、「盛り上がりポイント」の演出に長けています。
プロレスラーが必殺技の前に「よっしゃ!行くぞー!」と観客をあおって盛り上げるように、ストVでは盛り上がりポイントが随所に仕込まれているのです。
Vトリガー時のカットイン、CA時のカットイン、これらは分かりやすい盛り上がりポイントでしょう。
補足ですが、ストVの「Vトリガー」、鉄拳7の「スローモーション演出」は格闘ゲームの観点から、どちらも問題があるシステムだと言えます。
「Vトリガー」は強力すぎてあまりに逆転要素が高すぎること、攻められている側が逆に有利になってしまうことが挙げられます。
「スローモーション演出」は本来であれば対応できない状況に対応できてしまう、ということが起こります。
たとえば、見てからガードできない技を見てからガードできてしまう、ヒット確認できない技でもヒット確認できてしまう、など。
しかし、視聴者を楽しませてくれる非常に優れた演出だと言えるでしょう。
2.キャラの個性が分かりやすく強調されている
結論から「ストVの方が分かりやすいキャラ作りをしている」と言えます。
過剰にデフォルメされたデザインからも分かるように、パッと見でどのようなキャラかイメージしやすいのです。
スクショを3枚貼るので、どのようなキャラか推測してみてください。
どうでしょう?
何となくどのようなキャラか伝わってきませんか?
対して鉄拳です。
見る人の感性にもよるので、あまり深く追求しませんが、ストVの方がどのようなキャラか伝わってきやすいと思います。
ストVではキャラに武器を持たせたり、氷柱を発生させるなどの特殊能力を付加させることでも個性を演出しています。
こちらは作品の世界観が違い過ぎるので、鉄拳にとっては不利ですね。
システム的にも「Vスキル」「Vトリガー」によって、分かりやすくキャラの個性が強調されています。
ミカとザンギエフのVスキル↓
見た目、モーション、演出、すべてがレスラーであることを主張しています。
メナトとネカリの通常時↓
メナトとネカリのVトリガー時↓
よりキャラの個性が引き立つような印象を受けます。
何も知らない人に対して「どういうキャラなのか?」、「何をするキャラなのか?」、ストVは圧倒的に分かりやすく作られていることが分かります。
鉄拳にも「クマ」と「パンダ」のような分かりやすい個性的なキャラがいますが…
そのキャラ性能によって、あまり表舞台に上がって来ないのです。
人の目に触れることが多いキャラとは言えません。
誤解のないように書きますが「ストVのキャラの方が個性的である」と言っているのではありません。
見せ方の違いによって「キャラの個性が伝わりやすいのはストVである」と言いたいのです。
これは視聴者にとっても重要な要素だと思います。
「このキャラ格好良い」「このキャラが好き」と思ってもらえると視聴者の増加にもつながります。
あまりに長くなりそうなので、以上の2点で終わります。
もともとは「鉄拳よりストリートファイターの方が見ていて面白い」という意見を友だちから聞いたのが記事の発端です。
両タイトルを実際にプレイしているボクが考察した結果、今回の記事となりました。
他にも色々と書きたいことがありますが、あまりに長くなりすぎるのと、マニアックな方向に行ってしまうので、今回は伝えたいことを絞って書きました。
せっかくなので、最後に公式の対戦動画を張っておきます。
何となく記事で言いたかったことが伝わると思います。
鉄拳7(試合は54分~)
ストV
鉄拳7は知っている人は楽しめますが、そうでない人には楽しみづらい作りになっていると思います。
対してストVは何が起きているのか何となく伝わってくるので楽しみやすいと思います。
eスポーツと呼ばれ、表舞台にゲームが登場する機会も増えました。
プレイヤーだけではなく、見る側の視点も考慮しなくてはなりません。
なるべく多くの人がゲームを楽しめれば良いなと心から思います。