セラピーの一環として、銃乱射事件で息子を殺された遺族夫婦と、犯人の少年の親夫婦が対話をする映画です。
2時間のうち1時間30分くらいは対話シーンです。
ずっとお互いの夫婦が喋り続けているだけです。
過去の回想シーンもありません。
グロテスクな描写もありません。
※かなり人を選ぶ映画です。ボクはこの映画をおススメしません。
・「人を赦す」とはどういうことか知見を得たい方
・静的な映画が見たい方
まず最初に、ボクはこの「映画」が好きではありません。
良い「作品」ではあると思いますが、良い「映画」ではないです。
本作は、(おそらく意図的だと思いますが)映画のセオリーをほぼ無視して作られています。
映画である意味が無いのです。
物語の冒頭から「これがどのような映画であるのか?」が示されることがありません。
とある教会で、話し合いの場を設けるところから映画が始まります。
そこへ2組の夫婦が現れ対話を始めますが、それが何のための対話なのかも観客には示されません。
映画開始からようやく30分が過ぎた頃に、これが銃乱射事件の遺族と犯人の親との対話であることが台詞から分かります。
本題に入るまでが長すぎます。
メタ的な視点ですが、観客は前情報から「どういう映画なのか」を知った状態で見に行くわけです。
なぜ時間を引っ張って、本題に入らないのかが理解できません。
物語の冒頭で対話室を設けるシーンなんて一切必要無いです。
本当に失礼ですが、本作を映画館で見ていなかったら見るのをやめてました。
冒頭から退屈過ぎますよ。
ようやく本題に入ってからもシーンの切り替えはほぼありません。
ずっとお互いの夫婦が喋り続けているだけです。
過去の回想シーンが挿入されることもありません。
本作には音楽すらありません。
映画館で他のお客さんのマナーモードの音すら聞こえるくらい静かな映画です。
ほぼ2時間、絵面が変わらないなかで、会話の字幕に集中するのはキツイですよ。
大事なことも会話だけで済まされるので、気を抜くことができません。
部屋で対話をしているだけで映画を一本作り上げたのは見事です。
しかし、まったく面白くないです。
他のタイトルを出して申し訳ないですが、
「パラサイト 半地下の家族」という名作があります。
「格差」や「貧困」という重いテーマを描いた作品ですが、ちゃんと面白いんです。
映画は「面白さ」から絶対に逃げてはいけません。
本作は、面白さを蔑ろにしています。
「銃乱射事件」というセンシティブな題材を選んでいるので、扱いに注意が必要なのは分かります。
しかし、どんなに重いテーマを扱ったとしても、面白く作って欲しい。
絵面がほぼ対話シーンだけというのはやり過ぎです。
だったら朗読や紙芝居で良いじゃないですか。
2時間も使った映像作品にする意味がないですよ。
わざわざ映画で作るんだから、映像表現からは逃げないで欲しい。
「余計なものをそぎ落としたシンプルなつくり」
「名優が生み出す圧倒的緊張感」
「映像に頼らない表現」
これらの言葉を並べて本作を褒め称えることだってできます。
ボクからすれば、これらは本作の「特徴」であって、「長所」ではありません。
ただ、「人を赦すとはどういうことなのか?」、「なぜ人を赦さなければならないのか?」を最後に提示してくれたのは凄く良かったです。
そのメッセージも含めて、とても納得のいくものでした。
「良い作品」ではあるけれど、「良い映画」だとは思いません。
もっと面白く作るべきです。