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物凄く真摯に作られた全乗せホラー「ブラックフォン」感想 レビュー

目次

1.「ブラックフォン」ってどんな映画?

2.どんな人におススメ?

3.珠音真珠の感想

※楽しみを奪わない程度に少しだけネタバレを含む記事です。

 

1.「ブラックフォン」ってどんな映画?

誘拐事件が多発する地域に住んでいる少年が、断線された黒電話が壁に掛けられている部屋に監禁され、そこから脱出を計るというホラー映画です。

 

2.どんな人におススメ?

・面白いホラーを探している方

・脱出ものが好きな方

・力を合わせて少しづつ問題を解決していくのが好きな方

・スタンドバイミーやITなどの少年たちが活躍する作品が好きな方

 

3.珠音真珠の感想

結論から、2022年のベスト候補です。

素晴らしい作品です。

 

真摯に作られた真面目なホラーです。

もちろん、細かいツッコミどころはあるものの(ツッコミどころが無い作品なんて無いですが…)、細かに伏線が張り巡らされ、非常に良く出来ています。

 

記事タイトルで「全乗せ」という言葉を使いました。

文字通り、本作は全乗せなんですよ。

オカルト、スリラー、ミステリーなどなど、あらゆるジャンルが全乗せです。

 

それでいて、全ての要素が調和されているのだから凄いんです。

既存の要素を寄せ集め、上手く調理し、もはや新しさすら感じるほどに本作はフレッシュです。

 

基本的なストーリーは、誘拐され、監禁された主人公の少年が、監禁された部屋からの脱出を計るというものです。

監禁された部屋には、断線された黒電話が設置されていて、かつて主人公と同じように監禁され、殺されてしまった少年たちと通話ができるのです。

過去に監禁され殺されてしまった少年たちから、さまざまなアドバイスや脱出のヒントを受け取りながら少年は脱出を試みます。

 

つまり、主人公は一人で知恵を絞って脱出するのではなく、過去に殺されてしまった全ての少年と力を合わせるのです。

この設定はIT(イット)のような作品が好きな人には間違いなく刺さるでしょう。

子どもたちが知恵と勇気を振り絞り、力を合わせて困難に立ち向かう様子は、何度見ても良いものです。

 

キャラも立っていて素晴らしいですね。

誰がどのようなキャラなのか分かりやすいです。

 

大人しいけれど、根っこには強い芯がある主人公。

口が悪く勝気で、予知夢を見ることができる妹。

喧嘩がやたら強くて男気溢れる格好良い親友。

愛の裏返しで間違った過剰な教育を施す父親。

さまざまな表情を持ったミステリアスで超怖い誘拐犯。

 

個人的に誘拐犯の腹が出ているのが物凄く良かったです。

生々しい暴力の臭いが感じられる体型なんですよね。

これがムキムキマッチョだったら現実味がなくてファンタジーだし、そもそもキャラクター的に自分を鍛えたりしなさそうなので、冷めてしまったと思います。

何というかリアルに喧嘩が強い人間の体形というか、生まれついての力持ちみたいな、バイオレンスな体型が素晴らしいですね。

そのビジュアルは圧巻で、本当に恐かったです。

 

恐怖描写に関しては、程よくグロく、凶悪なジャンプスケアも何度かあります。

ちゃんと怖いので、ホラーを求めている人でも満足できると思います。

 

ただ、個人的にひとつだけ残念だった点もあります。

それは一度脱出して、また捕まる展開があることです。

本当にこういうの嫌いです。

ボクは常に物語が前進していなければ嫌なんです。

同じことを繰り返すとか、巻き戻るとか本当に辞めて欲しい。

ここだけは残念なところであり、一瞬だけ冷めてしまった点ですね。

 

最後に、ボクはこの映画のラストで感動を覚えたことを書いておきたいです。

主人公の少年が部屋から脱出するために、さまざまな努力を積み重ね、それが無駄になり、泣き崩れたこともありながら、それでも諦めずに、最後にそれらが身を結ぶ。

青臭いかもしれないし、綺麗事かもしれません。

しかし、汚れてしまった大人だからこそ、少年の頑張りと勇気を認め、褒め称えたいと思います。

 

ボクは劇場で主人公の少年に心を打たれました。

「人生に無駄なことなんてひとつもない」

そんな青臭い綺麗事をもう一度素直に信じられるような気持ちにさせてもらえました。

 

また明日から頑張ろうと思います。

この頑張りもいつかどんな形で身を結ぶか分からないですからね。

 

ブラックフォンは素晴らしい傑作です。

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