※基本的にネタバレはありませんが、事前情報無しで鑑賞したい方は注意してください。また、本記事はひたすら文句ばっかり言っています。
「ジョーカー」の続編である「ジョーカーフォリ・ア・ドゥ」を公開初日(2024年10月11日)に観てきました。
なにっ!?あのジョーカーに彼女ができるだと!?
弱者男性のダークヒーローとしてのジョーカーはもういないようだな…
こりゃ駄作に決まってるわ…
(このように考えた方もいると思います)
違うんです。
そういうことじゃないんです。
単純に映画としてつまんないんです。
退屈なんです。
前作のジョーカーには、社会的弱者に核爆弾を持たせたような緊張感がありました。
ここで言う「緊張感」とは、「期待」と言い換えても良いでしょう。
「やっちまえよ、世界を壊してしまえよ、世界を変えてしまえよ」
いつ爆発するのか分からない、それが恐ろしくも楽しみなんです。
だって持たざるものは壊すしかないのだから。
世界に火を付ける、アーサーが放った火が観客である我々にも燃え広がる。
アーサーという社会の底辺、弱者男性がジョーカーとして生まれ変わったとき、似たような苦悩に悶えている我々もジョーカーにヤラれてしまうのです。
前作は間違いなく傑作です。
そのような緊張感(期待)が本作では全然感じられないんですよ。
シチュエーションからして大失敗です。
本作は、前作で「アーサーが逮捕された後の話」です。
もうこれが駄目です。
内に狂気を孕んでいる、それでも実生活では何とかギリギリ耐え忍んで社会に溶け込もうとしている。
前作のジョーカーは、社会の片隅で生きていました。
まるで我々の隣にいるかのようにです。
ひとつボタンを掛け違えたら…一皮剥いたら…
実はヤバい奴なのかもしれない…それが我々のいる社会に溶け込んで暮らしている…
もしかしたらあなたの隣にいるかもしれないし、自分がそうなるかもしれない。
今作では、最初から「ヤバいやつが刑務所に収監されている」。
それって普通ですよね。
もうこの時点で前作と比較しても全然スリリングじゃないんですよ。
さらに言えば、刑務所にはアーサーとは比較にならないほど凶悪でモラルのネジが外れた囚人もいるわけで…
刑務所内のアーサーはハッキリ言って全然普通です。
変な行動を起こすわけでもない、脱走を企てるわけでもない(実際に模範囚としての評価を受けている)。
シチューエーションからして面白くない。
悪の蕾が開花していく前作とは違い、今作は花が枯れた後なのです。
もう面白くない。
そして、キャラクターが記号的すぎます。
代表的なのは、ジョーカーの恋人役となるレディー・ガガ演じるハーレイ・クインです。
出会った瞬間から無条件にアーサーにベタ惚れだし、安っぽいアニメを見ているかのようです。
ジョーカーの狂気に心惹かれるのは分かるのですが、具体的に何がそこまで彼女の琴線に触れたのか?など描写が足りないのです。
(たとえば、ハーレイ・クインに何らかの危害を加えていた人物が、ジョーカーの起こした暴動で死亡した、など、魅せ方はいくらでもあったはず)。
あなたはこういう役ね、あなたはこういうキャラクターね。
何だか全体的にキャラクターが薄っぺらいんですよ。
それは主人公であるアーサーも同様です。
どこを切り取っても前作の焼き直しのような場面(しかもスケールダウン)ばかりです。
ジョーカーとしての狂気が足りません。
(え?こんなことまでやってのけるの?マジでイかれてる!)そう思わせてくれるような描写は最後までありません。
前作の方が主人公の描き方として魅力的でした。
そもそも、ジョーカーがジョーカーに見えないし、ハーレイ・クインがハーレイ・クインに見えないんですよ。
コスプレしたホアキン・フェニックスと、コスプレしたレディー・ガガなんです。
ジョーカーに見えないし、ハーレイ・クインに見えません。
これは、演者が悪いんじゃなくて、完全に脚本と演出が悪いんです。
それほど、キャラクターの描き方が記号的でチープです。
薄っぺらいです。
ミュージカルのシーンが多すぎるし、長すぎます(ちなみに監督はミュージカル映画ではないことを主張している)。
事あるごとに、歌って踊るんです。
インド映画顔負けの頻度で歌って踊ります。
しかし、インド映画(に限ったことではないが)であれば、悲しいシーンは重くなりすぎないように、物語が好転する場面では、より盛り上がるように、ミュージカルシーンにも必ず意味があるように作られています。
本作は、微妙な空気になったら、とりあえず鉄板ネタを連発する下手なお笑い芸人のようにミュージカルシーンが挿入されます。
ミュージカルシーンの出来が良いとか悪いとかじゃないんです。
鬱陶しいんですよ。ノイズでしかないんです。
とりあえず困ったら歌って踊る。
ジャイアンリサイタルに付き合わされる人の気持ちが分かりました。
このミュージカルシーンが多すぎるのも、レディー・ガガのコスプレ感を助長させています。
上手いです、レディー・ガガの歌声もパフォーマンスも素晴らしいです。
でも、じゃあそれはハーレイ・クインなのか?
最後に、監督は「本作は賛否両論であろう」ことをインタビューで語っています。
やめてくれませんか?
言いたいことはわかります。
本当に分かるんです。
でも、少なくともボクは本気で期待しているからこそ、公開初日に観に行ったんです。
予防線を張るような真似をしないでくれよ。
創作物に賛否両論あるなんて当たり前です。
「これは賛否両論ある作品なんだから、合う合わないがあって当たり前ですよ」。
それをクリエイターが、作品の神様が言うなよ。
言い訳にしか聞こえないんですよ(しつこいようだが、言いたくなる気持ちは理解できる)
本音がどうであろうが、自信を持って作品を送りだしてくれよ。
最初から腰が引けた態度をとらないでくれよ。
少しだけ、個人情報を晒します。
ボクが前作であるジョーカーを観たとき、ボクの家族が詐欺のような目にあっていました。
実際に当時は、ボクが数百万円を肩代わりしました。
嘘じゃありません。本当の出来事です。
ボクは世の中を呪っていたし、底辺弱者男性のボクが、なんでこんな目にあわなきゃいけないのかと憤っていました。
そんなときにジョーカーを観たのです。
ヤられるでしょ?
そりゃあヤられますよ。
ふざけんな。
てめぇらみんなくたばっちまえ(暴言すみません)。
そんなボクの心境を代弁するアーサーに、ジョーカーにヤられたのです。
続編である「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」は駄作だと思います。
それは良いんです。
でも、何のために作った作品なのか本当に分からないし、監督の態度が不誠実で腹が立つんです。
前作のジョーカーは、監督のやりたいことが完璧に詰め込まれた傑作だと思います。
今作は、前作がヒットしたから適当に作った商業主義の産物にしか見えません。
否定ばかりすみません。
きっとこの作品が好きな方もいると思います。
本当にすみません。
でも、ボクは本当にこの作品が嫌いです。
世紀の駄作です。