映画で生き残る

オタク以外は食べたら即死する闇鍋映画「バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」感想 レビュー

目次

1.「バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」ってどんな映画?

2.どんな人におススメ?

3.珠音真珠の感想

※楽しみを奪わない程度にネタバレをします。ただし、作品の核心に触れるほど重大なネタバレはありません。

 

1.「バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」ってどんな映画?

大人気ゲームである「バイオハザード」原作とした映画です。

ミラジョボビッチ主演のシリーズとは違います。繋がりもありません。

本作の方がミラジョボビッチ版よりも原作に近い雰囲気を持っています。

「ゾンビが闊歩する地獄のラクーンシティから脱出を計る」という群像劇です。

 

 

2.どんな人におススメ?

・バイオハザードが好きな方

・バイオハザードに詳しい方

バイオハザードを知らない人は見ても混乱するだけなのでおススメしません。

 

3.珠音真珠の感想

結論から「オタクへの目配せに気を使った結果、ファンしか飲み込めない闇鍋が誕生した」という感想です。

 

まずは下記の言葉を読んでください。

「かゆい…うま」

「リサ・トレヴァー」

「月光」

これらの言葉にニヤニヤできた方はおめでとうございます。

ぜひ映画を鑑賞してください。

何を言っているのかさっぱり分からなかった方は、残念ながら本作を鑑賞しても理解するのは難しいでしょう。

 

さて、ボクはバイオハザードシリーズが大好きです。

ナンバリングタイトルは全てプレイしているくらいにはファンです。

 

↓の画像を見てください。

宣伝ポスターに対するボクの第一印象です。

正解は左から「ウェスカー」、「クレア」、「レオン」、「ジル」、「クリス」です。

このように、原作ファンでも第一印象では登場人物が読み取れませんでした。

初見から危険な匂いがプンプンしますが、劇場へ足を運んで鑑賞してきました。

 

ところで、原作ありきの映画はなぜ叩かれがちなのでしょうか?

それは、原作の設定を大切にせず、好き勝手に改編されるからです。

ファンは、「原作を汚された」と怒りの声を上げます。

そのような視点から鑑賞すると、本作はとてつもなく珍しいタイプの映画と言えるのかもしれません。

 

まず、この作品は間違いなくバイオハザードです。

ミラジョボビッチ版よりも、よっぽどバイオハザードをしています。

オタク(あえて原作ファンではなくオタクと言わせて欲しい)が喜ぶ要素をたっぷり詰め込んであるんですよ。

前述した「かゆい…うま」、「リサ・トレヴァー」、「月光」、これらを始めとして、オタクへの目配せはバッチリです。

 

このキャラが分かりますか?

映画でもちゃんとこの人が出てきます。

ハンバーガーもムシャムシャと食べています。

これはオタクとしてテンションがぶち上がります。

 

オタクへ気を使ったのがよく分かるんですよ。

「コードベロニカ」のキャラまで出てきますからね。

あの双子が出てくるんですよ。

ボクは本当に興奮しましたね。

 

作品の途中で鍵が出てくる場面があるのですが、「クローバー」の装飾がされていたり、小道具も細かいです。

ここら辺の作りは本当に凄い。

 

と、ここまで聞けば、原作愛に溢れた素晴らしい作品のように思えるかもしれません。

しかし、残念ながら「映画」としては上手くいっていないのです。

 

原作からオタクが喜ぶ要素を摘まんできて映画に落とし込んだのは分かります。

そのおかげで、オタク以外の人からすれば本作はとても理解できない作りになっています。

オタク以外の人がこの記事を読んでも、何を言っているのか分からないようにです。

原作を知っていないと理解できないことが多すぎるんですよ。

見る前から前提知識を必要とするなんて映画の作りとして致命的です。

映画としての入り口が狭いのではありません。

オタク以外は完全封鎖されていると思っても良いでしょう。

 

テンポも悪くて鈍重な印象を受けます。

これはストーリーの進みが遅いというよりも、2つの要因があると思います。

1つ目の要因は、群像劇として各キャラを同時進行させていることです。

次々とキャラクターも場面も切り替わるため、映画の流れぶつ切りになっています。

クレアがどうなるのか知りたいのに、突然クリスの場面へと切り替わる、クリスに集中しているところでウェスカーの場面に切り替わる。

終始このような構成をしているので、どうしても流れが悪く感じてしまいます。

2つ目の要因は、演出パターンが少なすぎることです。

後ろからゆっくりとゾンビが起き上がる、正面から来たゾンビが突然消えて死角から襲ってくる、バリケードに群がるゾンビ、など(それさっきも見たよ)という演出が多すぎます。

演出のパターンを増やす、シチュエーションを変える、新たなクリーチャーを出す、観客を飽きさせないための工夫をもっとするべきだったと思います。

とくにバイオハザードは魅力的クリーチャーが多数いるので、もっと活用して欲しかったですね。

 

さらに、原作の要素を取り込んでいるものの、根本的な部分で原作崩壊しているんですよ。

失礼ですが、ボクが笑いをこらえた場面を列挙しますね。

 

1.他人の頭にケチャップのボトルを乗せて遊ぶウェスカー

2.所長にプレイボーイっぷりをおちょくられるウェスカー

3.ピアノで月光を弾いて仕掛けを解くウェスカー

4.お金を手に入れて田舎町から逃げたいウェスカー

5.悪になり切れない良いヤツのウェスカー

6.ジルが大好きなウェスカー

7.やたら発砲したがるジル

8.リッカーと対決するリサ・トレヴァー

9.とつぜん窓に「かゆい…うま」と血文字で書くウイルス感染者

10.全体的にキャラの再現度が低い(とくにレオン)のに、クリスだけやたらと再現度が高いところ

 

どう考えても原作ではありえない場面が多数あります。

(これだけオタクへサービスしているのに、何でそこは適当なんだよ)と、押さえるべきところを押さえられていないんですよ。

「こういうのを出せばオタクは喜ぶんでしょ?」という浅さしか感じなくなってしまいます(オタクのボクは結局喜んでしまうのですが)。

 

映画の土台がガタガタなのに中途半端にオタクへの目配せもした結果、何だかよく分からない闇鍋の出来上がりです。

オタク以外の人が食べたら即死するので食べないように注意しましょう。

 

でも、ボクはあえて言いたいです。

「オタクだったら黙って食べてみようぜ」と。

 

言いたいことは山ほどあるし、文句を言えばキリが無いのですが、ボクはそれでも本作を楽しめました。

スクリーン上で再現されたラクーンシティはとてもワクワクしますし、ゾンビのビジュアルも良かったと思います。

ホラーとしてみれば、ジャンプスケア(ドッキリ)に頼りっぱなしの感は否めませんが、それなりに緊張感もあり怖いシーンもありました。

それに、ボクの大好きな作品が映画として見られるだけで、それはもう幸福な体験です。

映画の帰りに、一緒に見に行った人とキャッキャと本作の話をするのも最高に楽しかったです。

 

オタクだったら食べてみませんか?

たとえ食中毒になっても、それすら笑い飛ばせますよ、きっと。

というか、オタクしか食べられないんですよ、黙って食べましょう。

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