ゲームで生き残る

時代が追いついていない哲学的な意欲作「Inverted Angel」【感想、レビュー】

 

1.「インバーテッドエンジェル」ってどんなゲーム?

テキストADV(アドベンチャー)ゲームです。

正体不明のメンヘラ系ストーカー地雷女子があなたの部屋を訪ねてきます。

彼女の正体を探るために思考を巡らせます。

ゲームにはAIが導入されていて、プレイヤーの解答(選択)を「だいたいのニュアンス」で判定してくれます。

とても哲学的な作品で、思考実験などが好きな方は突き刺さるでしょう。

ヤンデレ系女子が好きなんじゃ~という下心だけでプレイするのはちょっと難しいと思います。

小難しい話が嫌いな人は合わないです。

 

2.どんな人におススメ?

・哲学的な作品が好きな方、興味のある方

・推理するのが好きな方

・SF好き

・整合性とかどうでも良い、面白ければ何でも良いと考える方

 

3.良かったところ

・哲学的な内容に何度も考えさせられる

・物語の導入が完璧で一気に惹き付けられる

・意欲作であり、これからのゲームのあり方について考えさせられる

・スマホを使った演出がおもしろい

 

4.ちょっと気になったところ

・AIの判定が曖昧でストレス

・作者のやりたいことに対して技術が追いついていない

・難易度が高すぎる

・かなり人を選ぶ

 

5.今からプレイする方へアドバイス

・解答が分からない場合はバックログを見返すこと

・適当で良いので解答欄に入力してみる(思わぬ方向に話が進むこともある)

・いざとなれば攻略サイトに頼っても良いと思う

 

6.珠音真珠の感想

作者の趣味がギッシリと詰まった作品です。

哲学的な要素が豊富で、好事家に突き刺さります。

それだけに、かなり人を選びます。

 

突如あなたの部屋を訪れてきたメンヘラ系女子の正体を探るゲームなのですが、ひとつ注意があります。

それは「ミステリでは無い」ということです。

プレイヤーの選択肢によって結末が変わるのは当たり前ですが、他のミステリと違う点があります。

 

普通のミステリは、「◯◯が犯人」という前提がある上で物語が分岐します。

プレイヤーの行動によって、「犯人に殺されてしまう」、「犯人の正体にたどり着けずに逃げられてしまう」、「犯人を追い詰め逮捕に至る」など物語の結末が決まります。

本作は、プレイヤーが「◯◯が犯人である」と思えば◯◯が犯人になるし、「犯人なんていない」と思えば犯人がいなくなるし、「犯人と自分が恋人」だと思えばそういう関係の話になります。

物語に整合性を求める、キッチリとしたミステリを期待している方は合わないと思います。

ミステリ風味のSFと割り切った方が楽しめるでしょう。

 

AIによる解答の判定が「だいたいのニュアンス」というのは明らかに駄目なポイントです。

プレイヤーの意図を上手く汲み取ってくれません。

解答のあとに「あなたの言いたいことはこういうことで良いですか?」みたいなことを聞かれるのですが(そういうことじゃないんだけどなぁ…何て書けば良いんだ…)となることが多いです。

「ドキドキAI尋問ゲーム」でも思ったことですが、作者のやりたいことは凄く分かるし興味深いのです。

しかし、まだAIの技術が追いついていないのでしょう。

今作に関しては、素直にプレイヤーにいくつかの選択肢を提示して選ばせた方が良かったと思います。

プレイヤーが選んだ選択肢の先が面白いのに、そこにたどり着けないのはゲームの作りとして良くないです。

作者の意図したようにゲームを誘導できないのであれば、それは独りよがりです。

本当に勿体ないです。

 

本作を一つのアートとして見るなら素晴らしい作品です。

プレイヤーに体験させるゲームとして見るなら、駄目な部分が足を引っ張りすぎていると思います。

 

哲学的なテーマをメンヘラ女子を使って表現するという手法も素晴らしいアイデアです。

上手く学問とエンタメを融合させた発明と言っても良いでしょう。

 

とても惜しい作品です。

時代(技術)が追いついていない、哲学的な意欲作です。

もし、ラフィックノベルゲームにAIが導入されるのが当たり前の時代になったとき、その走りとして絶対に本作は評価されるときが来ると思います。

ちょうど現在(2025年)がAI時代の黎明期なのでしょう。






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