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銃で家は取り返せる「GET IN」(ゲット・イン)感想、レビュー

 

1.「ゲット・イン」ってどんな映画?

バカンスから帰ってくると使用人に家を乗っ取られてしまった。

取り返そうと奔走するが、法の壁によって阻まれてしまう。

そのうち近くに住むアウトロー集団と知り合い、非合法なやり方で家を取り戻そうと画策するようになるが…。

フランス・ベルギー合作の実話をベースにしたスリラー映画です。

コメディ要素は一切ありません。

かなり胸糞描写もありますので、気分じゃない方は見ない方が良いでしょう。

 

2.どんな人におススメ?

・胸糞映画が見たい方

・不条理劇が好きな方

・良心と怒りの間で葛藤する作品が見たい方

 

3.珠音真珠の感想

傑作だと思います。

素晴らしい作品です。

 

家を乗っ取られてしまった家族が、家を取り返すために奔走します。

法に訴え、正式な手続きを経て家を取り返そうとするも、上手くいかない現実に、主人公である夫のメンタルは疲弊していきます。

イラつき、落ち込み、自暴自棄に陥る。

そのうちに、近くに住むアウトローと知り合いになり、夫のメンタルにも変化が訪れます。

 

主人公である夫は、人間的に弱いです。

すぐに感情的になって癇癪を起こすし、トラブルの解決能力も高くありません。

頼りない人間です。

妻にもそれを見透かされています。

夫にとって家を取り返すことは、男としての尊厳を取り戻すことでもあるのです。

 

尊厳を失った男が、徐々に♂としての牙を取り戻そうとする作品は、いつ観てもワクワクします。

しかし、本作の主人公はなかなか一線を超えられません。

この辺りが妙にリアルで、本作の味でもあります。

理不尽な目に遭い、強烈な怒りに駆られたとしても、そう簡単には割り切れないでしょう。

観ている側からすれば(ウジウジしていないで、こんなクソヤローどもをやっちまえ!)なんて思いますが、もし自分が同じ立場ならきっと同じように足踏みしてしまうでしょう。

 

対して、本作の裏主人公とも呼べる、アウトロー集団のボスは主人公と真逆の性格です。

欲しいものは絶対に手に入れる、サイコパス気質の人間です。

目的のためなら法や倫理など軽く飛び越えてしまいます。

 

このアウトロー集団のボスのキャラクターが素晴らしいんです。

胡散臭いチンピラなのですが、妙なカリスマ性があるんですよ。

「家は銃で取り返せる」

「ダチから金は取らない」

「宇宙のバランスを回復する」

吐き出す言葉の一つ一つに求心力があるのです。

人の心理を見抜くのも得意で、異常なまでに人を惹き付けます。

おそらくマルチ勧誘やカルト宗教のボスをやっても成功するでしょう。

主人公もすっかり焚き付けられてしまいます。

キャラクターの対比として面白いです。

 

人間ドラマとしても楽しめますが、映像的な派手さもあります。

爆発シーンもありますし、キャンピングカーを使用したDIY殺法も披露してくれます(ネタバレになるので詳細は伏せる)。

暴力描写も容赦ありません。

派手に鮮血が飛び散るスプラッターではなく、リアルに痛みを感じるような暴力の描き方なのです。

人間の尊厳を暴力によってねじ伏せる描写に、胸が締め付けられます。

ガチで胸糞になる描写も多いので、苦手な方は観ない方が良いです。

 

ボクは傑作だと思います。

不条理劇として、完成度が高い作品です。

胸糞なだけではなく、映像的な派手さもあるし、ちゃんとエンタメもしていて、バランスも好みです。

人種差別であったり、貧困であったり、社会的なメッセージも散見されるのが興味深いところです。

もし家を乗っ取られたら、あなたならどうします?








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